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「転職で給与アップ」を本気で狙う
転職して、今よりもっと給与の高いところで働きたい。転職を考えるとき、このように考える人も少なくないのではないでしょうか。しかし何も戦略を立てずに転職してしまえば、最悪の場合給与がダウンしてしまう可能性もあります。
給与ダウンを防ぐためには、自分の市場価値を高めておくことはもちろん、採用担当者はどのようにして給与を決定しているのかという視点や、どのようなタイミングで給与交渉をすべきなのかといった視点も必要です。ここではこうした様々な視点から、給与アップの転職を実現するための知識や考え方、方法について解説します。
転職における給与の現実

●転職における給与は「アップした」が3割程度
転職先の企業にとって、転職希望者の能力は未知数です。これを理由に入社当初は給与を低めに設定する企業もあるため、「転職で給与が下がるのは当たり前」と言う人も少なくありません。
しかし6,000人の転職者データに基づいた分析によると、実際に転職によって給与がダウンした人とアップした人の割合はほぼ同じで、それぞれ3割程度を占めることがわかっています。なお、残りの3割は同程度の給与に落ち着いたと回答している人たちです。つまり転職先の選び方や本人のスキル次第では、十分給与アップの転職は実現可能であるということです。
「給与アップの転職」のための2つの視点
給与アップの転職を実現するためには、大きく2つの視点が必要です。ひとつは「採用担当者はどうやって給与を決めているのか?」という視点です。例えば徹底的に勤続年数だけで給与を決めている企業があったとします。
この企業に対して、いくら自分のスキルや実績をアピールしたところで、入社後にもらえる給与は入社1年目の金額にすぎません。前職での給与が高いほど、転職による給与ダウンは確実なものとなります。したがって、給与アップの転職を実現したければ、採用担当者が給与を決定しているルールをあらかじめ知っておく必要があるのです。
もうひとつの視点は「転職希望者自身はどう動くべきなのか?」です。いくら転職を希望している企業の給与決定のルールを把握していても、自分のスキルや実績をきっちりアピールできなければ意味がありません。
また「給与に納得がいかない」と給与を理由に転職を繰り返していけば、転職自体が難しくなるばかりか、自分の市場価値はどんどん下がっていってしまいます。こうした事態を防ぐためには、給与アップの転職のために自分が何をするべきなのかを知っておく必要があります。
採用担当者はどうやって給与を決めているのか?
「採用担当者はどうやって給与を決めているのか?」「転職希望者自身はどう動くべきなのか?」この2つの視点のうち、まずは前者について詳しく見ていきましょう。以下で解説するのは基本となる3つの給与決定ルールのタイプと、それらの根拠となる8つの給与体系についてです。転職希望先の企業がどのタイプに当てはまり、どの給与体系を採用しているのかを、あらかじめリサーチしておきましょう。
●前職の給与ベースで考慮する
まずは前職の給与をもとに、自社の同レベルの社員との比較で給与を決定するタイプです。「自分を評価してほしい」という気持ちはあって当然ですが、企業側にはすでに今まで働いてきた社員がいます。新しく採用した社員の給与も、その人たちが納得できるように設定しなければ、入社後の業務に支障がでかねません。したがって自社の同レベルの社員との比較を行うのです。
この場合、前職の給与以外にも、スキルレベルや実績、経験年数、職務給・職能給(後述)を掛け合わせて給与を決定する場合もあります。こうしたルールを適用している企業に対しては、積極的に自己PRをすれば、それだけ給与が高く設定される可能性が大きくなります。
●年齢別給与テーブルをベースに決定する
次は年齢別給与テーブルがベースになっているタイプです。年齢別給与テーブルとはその名の通り、年齢を基準にした給与水準を指します。既存の社員はもちろん転職希望者の給与も、このテーブルをベースに決定されることとなります。
採用担当者からしてみれば、半ば自動的に給与が決まるので転職希望者に対しても説明しやすい給与決定ルールですが、転職希望者にとっては「同じ年齢でもスキルや実績が違うのに、評価されないのか」という不公平感につながる可能性のあるルールでもあります。そこで企業の中には年齢別給与テーブルをベースにしたうえで、年齢以外の要素も加味して最終的な金額を決定するところもあるようです。
このタイプの給与決定ルールを採用している企業では、転職希望者のスキルや実績というよりは、前職の企業の給与水準との差が給与アップもしくはダウンの分かれ目となります。
すなわち給与水準が低い企業から高い企業に転職すれば給与は上がりますし、その逆であれば給与はダウンするのです。他のタイプの給与決定ルールでも同じことが言えますが、年齢別給与テーブルがベースになっているタイプでは特に大きな影響力を持ちます。
●成果・業績をベースに決定する
最後は成果・業績をベースに決定するタイプです。最初の給与設定は前職でのキャリアや面接での受け答えなどで判断されるものの、その後の給与は成果・業績で上がりも下がりもします。能力さえあれば給与アップが見込めますが、逆に結果を残せなければ当然給与ダウンにつながるでしょう。
注意したいのは、同レベルの給与水準の企業の場合、成果・業績ベースの企業の方が他の給与決定ルールを採用している企業よりも、入社直後の給与が低くなりやすいという点です。これは「入社直後は成果も業績も残していないから」と諦め、まずは結果を残すことに力を注ぎましょう。ただしどのような結果を残せばどれだけ給与に見返りがあるかについては、事前に確認しておきましょう。
7つの主な給与体系

以下では、ここまで解説してきた3つの給与決定ルールの主な根拠となる7つの給与体系を紹介しておきます。「採用担当者はどうやって給与を決めているのか?」を把握するための基礎知識として知っておきましょう。
1.総合給方式
これといった基準を設けず、年齢・勤続年数・学歴・仕事内容・実力・実績・職責・職場環境などあらゆる要素を総合的に評価して、給与を決定する方式です。広く採用されている方式で、社員ひとりひとりの状況に応じて給与を決定できる反面、給与決定プロセスが不透明になりやすいというデメリットがあります。
2.資格給方式
職務遂行能力に応じて社員に資格等級を設け、その資格等級に基づいて給与を決定する方式です。資格等級が昇格しない限り昇級はありませんが、遂行できる職務に応じて確実に給与が上がっていくので、合理的な給与体系だといえます。ただし、上位の資格等級を持っている人の数が増えるほど人件費が膨らんでしまう点、原則上定期昇給ができない点など、デメリットもあります。なお、類似した給与体系に「職能給」があります。
3.役割給方式
会社員には能力・意欲・年齢等に応じて求められる役割があります。例えば新入社員なら「仕事を早く覚える」、管理職クラスなら「各々の部下のマネジメントにより、結果を残す」などが挙げられます。企業で果たされるべき責任は役割によって違い、責任が重くなるほど役割を果たすことも難しくなります。
そこで重大な役割には、相応の給与を支払うというのが役割給方式の考え方です。資格給同様、合理的な給与体系ですが、役職者以外の社員の役割の具体化や役割に応じた給与金額の設定が難しいなどのデメリットもあります。
4.職務給方式
資格給および役割給よりも、さらに具体的な仕事内容にスポットを当て、その難易度や責任の重さを分析・評価して給与を決める方式です。社員にとっては「どんな仕事ができればどれだけの給与がもらえるのか」が明確になるためモチベーション維持に役立ちます。しかしどのような区分にするべきか、もしくはどのような給与金額にするかの判断が難しいという点はデメリットです。
5.職種給方式
給与の決定基準に職種(営業、企画、事務など)を設定した方式です。給与金額は経営に果たす重要性や難易度などを考慮して決定されるため、合理的かつ説得的です。しかし職種ごとに上限も設定されているため、職種によってはその他の要素(年齢、勤続年数など)にそぐわない給与になる可能性もあります。
6.業績給方式
社員の資格等級ごとに業績目標を設定し、その達成度に応じて給与を決定する方式です。成果に基づいて昇給減給が決定されるため、頑張りが給与に反映されるという意味では合理的です。ただし前提となる評価方法や、評価に基づいた給与金額の決定プロセスが適切でなければ、機能不全を起こしてしまいます。
7.コミッション給方式
歩合給、出来高給と呼ばれる方式で、売上高や契約件数などの営業成績に応じて給与を決定する方式です。コミッション給方式には給与全てをコミッションだけで構成する場合と、固定給や営業手当にコミッションを上乗せする場合があります。給与決定プロセスが明確になる反面、社員間のコミュニケーション不良や不安感につながる危険性もはらんでいます。
以上が基本的な給与体系です。自分の転職希望先の企業がどの方式を採用しているのか、その方式で自分が評価されるにはどのようなアピールが必要かをあらかじめ確認しておきましょう。また、どの方式も一長一短なので、短所をどのような仕組みで補っているのかを確認しておく必要もあります。
転職希望者自身はどう動くべきなのか?
「採用担当者はどうやって給与を決めているのか?」を理解していれば、それに応じた書類作成や自己PRができるようになります。しかしこれだけでは給与アップの転職を実現するための戦略として不十分です。続いて「転職希望者自身はどう動くべきなのか?」について考えていきましょう。
●給与交渉のベストタイミングを見極める
・給与交渉と給与決定ルールの関係
最初に考えるべきは給与交渉のタイミングです。例えば「前職の給与ベースで考慮する」タイプの企業の場合、給与のおおよその金額を決めるのは書類選考の段階か、遅くとも一次面接の際です。
なぜならば給与のベースとなるのが転職希望者の前職の給与と、同レベルの既存社員の給与だからです。これらの情報はごく初期の段階で手に入るため、給与が決まるのも早くなります。にもかかわらず二次面接以降で給与交渉を始めると、企業側からすれば「先に言ってよ」となってしまいます。
これに対して「成果・業績をベースに決定する」タイプの企業の場合、給与のおおよその金額を決めるの二次面接までとややゆっくりめです。このタイプでは、前職でのキャリアや面接での受け答えをもとにスキルレベルを判断し、別府者直後の給与を決定します。
このスキルレベルの判断を下すためには、ある程度面接を重ねる必要があるというわけです。そのため書類選考の時点で給与交渉を持ちかけても、企業側には判断材料がありません。
「成果・業績をベースに決定する」タイプに対しては、ある程度こちらのスキルを把握してもらってから給与交渉をするのが吉です。こうした配慮をするためにも、まずは転職希望先の企業の給与決定ルールを把握しておく必要があるのです。
ちなみに、企業の人事担当者100人を対象としたアンケートによれば、一時面接時が給与交渉のベストタイミングだと答えた人が6割近くにも上っています。もちろん厳密には企業によって、あるいは採用担当者によって変わりますが、一つの目安として「給与交渉は一次面接時に行う」と覚えておくと良いでしょう。
・「金額」と「根拠」は明確に
また給与交渉をする際は、次の3つの金額を明確にしておきましょう。
1.ボーナスを含めた年収の額面(税引き前の数字)はいくらか。
2.現在の年収に対して何%アップさせたいか。
3.年収に占める残業代の割合はどれくらいか。
唐突に「年収○○○万円でお願いします」と言われても、採用担当者は判断のしようがありません。これらの具体的な金額が提示されれば、「この転職希望者にいくら出せるか?」という判断がしやすくなります。
また、現在の年収に対して20%アップを希望するとして、その根拠も明確にしておく必要があります。例えば希望額を提示したうえで、その給与に見合った結果をどのように出すつもりかを具体的に語ったり、「上司から役職者への昇進を持ちかけられている」と近い未来の給与予測を提示したりと、採用担当者が納得できる根拠を用意しておきましょう。
逆に業務に直結しそうにない資格を理由に給与アップを要求したり、未経験にもかかわらず前職よりも高額な給与を要求したりすれば、間違いなく印象は悪くなります。自分と企業、双方にとって合理的な給与アップの根拠を提示できて初めて、給与アップの転職が実現できるのです。
●転職希望先の業界・職種の相場を知っておく

・自分のネットワークを使って相場をリサーチする
異業界・異職種に転職する場合はもちろん、前職と同じ業界・職種に転職する場合でも、転職希望先の業界・職種における「給与の相場」を知っておくに越したことはありません。
なぜなら「前職の給与ベースで考慮する」「年齢別給与テーブルをベースに決定する」「成果・業績をベースに決定する」これら3つのうちどのタイプの給与決定ルールを採用しているにせよ、給与の相場が前職の給与よりも低ければ、転職後の給与も低くなってしまうからです。
しかし一般的に具体的かつ正確な給与の情報をインターネット上で見つけるのは至難の技。したがって給与の相場は、「インターネットで検索してちゃちゃっと調べる」というわけにはいきません。ここで役に立つのは自分がこれまで作ってきた人的ネットワークです。
転職希望先の業界や職種で働いている知人・友人にリサーチをして、確実な情報を集めていくのです。しかし知人・友人とはいえ、給与はデリケートな話題です。必ず「今真剣に転職を考えていて、業界・職種の給与の相場が知りたいんだ」などと、自分が興味本位で尋ねているのではないという姿勢を見せましょう。そうすればきっと協力してくれるはずです。
・転職エージェントで自分の価値を知る
「自分のネットワークなんてない」「給料の話はしづらい」という人は、転職エージェントを利用するのもひとつです。転職エージェントには日々大量の業界・職種の情報が集まっており、その中には当然給与の情報も含まれています。「あなたの適正年収はいくらです」とまでは言えなくても、これまでのキャリアや実績と転職希望先の業界・職種から、転職希望者の市場価値を推測することは可能です。
キャリアコンサルティングを受ければ料金が発生するのではないかと心配する人もいるかもしれませんが、転職希望者は転職エージェントのサービスを無料で利用できます。転職エージェントは採用が決まって初めて、企業側から報酬を受け取ることでビジネスを成立させているからです。
給与面の相談だけでなく、自己分析や企業の選び方など、転職エージェントは様々な面で力になってくれます。まずは気軽に相談してみましょう。
●自分の市場価値を高めておく
自己分析や企業・業界研究をしてみて「今の自分では給与アップの転職は難しいかもしれない」と思った人は、無理やり転職しないほうが無難です。
というのも冒頭で紹介した6,000人の転職者データに基づいた分析によると、給与アップの転職を果たした人のうち53%が初めての転職だということがわかっているからです。2回目の転職で給与アップを果たしたのは26%、3回目になると13%にまで減ってしまいます。
もちろん「転職回数が多い=不利」と単純に言えるわけではありません。しかし転職回数が少ない方が、給与アップの転職がしやすいというのも事実です。それならば無理やり転職をせずに、じっくりと時間をかけて自分の市場価値を高める方が得策でしょう。以下では20代から40代の市場価値の高め方を紹介します。
・20代は「成果」と「スピード」を重視する
20代は「目的」と「スピード」を重視して結果を出し、とにかく自分のビジネススキルを磨き、より大きな仕事を任せてもらえるよう成長する年代です。ライフネット生命会長の出口治明さんは著書『「働き方」の教科書: 人生と仕事とお金の基本』の中で、仕事の成果を上げるためには「まず第一に、仕事の目的を考えること」(p122)だと書いています。
ただ上司から言われたことを右から左へ流すのではなく、その都度仕事の意味を考える。そうすればひとつの仕事から得られる気づきも増え、実績につながる仕事をより早く任せてもらえるようになります。
出口さんが目的を考えるのと同じくらい重要視しているのが「スピード」です。一定以上のクオリティを保ちながら仕事のスピードを上げるには、短時間に高い集中力を発揮する必要があります。そのためスピードを重視すると、自然と集中力が強化され、徐々に生産性もアップしていきます。生産性がアップすれば同じ時間で処理できる仕事の量も増えていくので、さらに多くの経験ができ、成長速度も上がっていきます。
このように「目的」と「スピード」を重視して結果を残していけば、自ずと20代のビジネスパーソンとしての市場価値は高まっていくでしょう。
・30代は「上と下の架け橋」になる
30代になると自分の仕事ばかりにかかずらっているわけにはいかなくなります。上司からは相変わらず指示を受けますが、さらに部下の指導・育成という仕事が増えます。30代のビジネスパーソンに求められているのは、上と下の架け橋となりつつ、同時に自分のスタイルもねじ込んでいく強かさなのです。
例えば部下とのコミュニケーションの時間を増やしてやる気を引き出す。あるいは上司を操縦しながら自分の意図通りに動いてもらう。そうして自分のチームのパフォーマンスを上げ、転職の際に自分の仕事として語れる結果を残していきましょう。
これは「自分の手柄にしろ」という意味ではありません。20代で培ったビジネススキルをフル活用して、マネジャーとしての実績を残そうという意味です。これこそが30代のビジネスパーソンに求められているスキルであり、40代のキャリアへの足場となります。
・40代は得意分野を捨て、マネジメントに徹する
40代の仕事の幅は30代とは比べものにならないほど広くなります。例えば30代で課長を経験した人が、40代になって部長に昇進すると、それまでは関係なかった別の課まで自分の管理下に置くことになります。
こうなると今まで自分が所属していた課だからといって、以前の部下とばかりコミュニケーションをとっているわけにはいきません。古巣の部下には仕事を任せ、他の課の仕事も勉強する必要があります。そのため出口さんは「四○代で最も意識するべきことは、自分の得意分野を捨てること」(前掲書p168)だと書いています。
得意分野を捨ててどこで活躍するのかといえば、マネジメントです。30代でもマネジメントスキルは求められますが、40代ではマネジメントスキルがより市場価値に影響します。そのことを肝に銘じて、マネジャーとしての仕事に全力を注ぎましょう。
・女性は「いい子」よりも「リーダー」を目指そう
女性のライフスタイルに関する著書を多く持つ坂東真理子さんは著書『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』の中で、今後女性がビジネスパーソンとして活躍するための方法を記しています。この本によれば、女性はつい「謙虚ないい子」を目指したり、女性らしさを必要以上にアピールしてしまったりする傾向があるそうです。
しかしそれは「女性としての自分」に囚われており、「ビジネスパーソンとしての自分」に到達できていない証拠です。これでは市場価値は高まりません。「いい子」になるよりも「リーダー」を目指す。これこそが女性が転職市場で自分の価値を高めるために求められる姿勢なのです。
ベンチャー企業の「ストックオプション」を狙いに行く
ここまではどちらかというと正攻法の戦略を紹介してきましたが、ここからは少し違った視点で給与アップの転職を実現する戦略を2つ紹介します。ひとつ目はベンチャー企業の「ストックオプション」を狙うという戦略です。
・ストックオプションで一発逆転を狙う
ストックオプションとは企業が社員や取締役に対し、あらかじめ決めておいた価額で将来的に株式を取得する権利を与える制度を指します。例えば入社時に「今後3年間、いつでも300円で2,000株まで当社株を購入して良い」というストックオプションを提示されたとします。3年後、この企業の株が1株1,000円に値上がりしたとしましょう。この時ストックオプションの権利を行使して2,000株を購入すると、差額の700円×2,000株=140万円の利益を得ることができます。
株式公開を果たしている企業、特にこれから伸びるであろうベンチャー企業でストックオプションを得られれば、給与とは別に大きな利益を手にできる可能性があるというわけです。また、企業の業績アップに自分が貢献できれば、新たなキャリアを形成することもできます。
・ストックオプションを狙う際の注意点
うまくいけば一発逆転の利益が手に入るストックオプションですが、決して見過ごせない注意点があります。それは企業の業績が伸びなければ、ストックオプションの利益どころかキャリアすら危うくなるという点です。当たり前ですが、企業の業績を100%正確に予測することは不可能です。そのためストックオプション欲しさに転職先を決めてしまうと、とんでもないしっぺ返しを食う危険があります。
またベンチャー企業には他の企業とは違う風土があります。第一に社員がそれぞれ自分の意思で自主的に動くのが常識なので、指示系統が発達していません。そのため明確な指示がなければ仕事にとりかかれないという人にとって、ベンチャー企業での毎日は苦痛でしかないでしょう。
第二に絶対的に人手が足りていません。そのため役割や職務、職種の区分も曖昧です。営業が経理の仕事をしたり、企画が営業に出たりするのも当たり前。「自分の仕事はここまでです」といった言い分は通用しません。第三にかなりのハードワークです。残業や休日出勤はどうしても発生するので、「転職してゆっくり働きたい」という人は絶対に向いていません。
ベンンチャー企業が提示するストックオプションには確かに大きな魅力があります。しかしそれだけを理由に転職先を選べば、ストックオプションの利益以上の損をしてしまいます。ストックオプションはあくまで転職先選びの判断要素のひとつとして考えるようにしましょう。
Uターン・Iターン転職も視野に入れる
2つ目の戦略は「Uターン・Iターン転職」です。Uターン転職とは地方から東京に出て働いていた人が地元に帰って転職すること、Iターン転職は都市から地方に転職することを指します。
・Uターン・Iターン転職でも給与アップは狙える
地方への転職というと給与ダウンが当たり前と考えている人も多いかもしれません。しかし実は東京や大阪といった都市への転職よりも、静岡や福岡、北海道といった地方への転職の方が給与アップ率が高いというデータがあります。
地方に本社を持つ大企業は少なくありません。そうした企業が前職よりも高い給与水準を持っていれば、地方へ行っても給与アップは実現できます。また専門的な技術や都市で培ったノウハウを持っていれば、高待遇で受け入れてくれる可能性もあります。消耗の多い都市の生活からの脱出と給与アップ、この2つを同時に叶えられるのがUターン・Iターン転職なのです。
・「起業」という選択肢も視野に入れる
「移住で失敗したくないなら「クラウドファンディングの数」を見よう!移住と仕事のつなげ方」でも紹介したように、今はあちこちの地方で外部からの受け入れ体制が整いつつあります。宮崎の信富町や、茨城県の取手市、宮城県の女川町などでは、地域起業家育成・地域ビジネス創出の動きが官民連携で促進されています。このような地域であれば、都市よりも圧倒的にスムーズに事業をスタートさせることが可能です。
もちろん黒字化するまでは収入はダウンします。しかし本当に自分のやりたい事業であれば、そんなことは度外視して仕事に打ち込めるはずです。無理に起業する必要はありませんが、選択肢のひとつとして視野に入れてみてはいかがでしょうか。
周到な戦略で給与アップを勝ち取ろう
転職での給与アップは十分可能です。しかし本気で給与アップを狙うのであれば、周到な戦略を立て、実行しなくてはなりません。採用担当者にとっての「給与」をよく理解するとともに、転職希望者としてできることを積み重ねて行く必要があります。そこまでしてようやく給与アップを勝ち取ることができるのです。ここで紹介した内容を参考に、ぜひ給与アップの転職に挑戦してみてください。
参考文献『改訂版 多様化する給与制度実例集』 『「働き方」の教科書: 人生と仕事とお金の基本』 『女性リーダー4.0 新時代のキャリア術』
