教養を身につける最適なテキスト!半世紀以上生き残った古典20選

11.『個人心理学講義: 生きることの科学』

画像出典:Amazon

著:アルフレッド・アドラー 訳:岸見 一郎

心理学者であり、哲学者でもあるアルフレッド・アドラーが、自身の心理学の全体像を俯瞰した一冊。

コンプレックスや人生のあり方、そして個人と社会の関係性など、アドラー心理学のキーワードを概観できる内容となっています。大ベストセラーとなった『嫌われる勇気』の共著者であり、多くのアドラーに関する著作を持つ哲学者、岸見一郎が翻訳を担当しています。

正直なところ「初めてアドラーを読む」という人にはややわかりにくい部分も多い本書ですが、『嫌われる勇気』をはじめいわゆるアドラー本を読んだあとなら、アドラー心理学のポイントをアドラー自身の言葉で再確認することができます。

自分の過去や人間関係と上手に付き合っていきたい人の座右の書となる本です。

市民社会の基礎を知る!フランスのおすすめ古典

12.『方法序説』(ちくま学芸文庫)

画像出典:Amazon

著:ルネ・デカルト 訳:山田 弘明

西洋近代哲学のパイオニアとなったデカルトの著作。哲学の思想書というよりは、デカルト自身の哲学的な遍歴をたどったもので、なぜ彼が「我思う、ゆえに我あり」という思想に行き着いたのかを自伝的に語っています。そのため比較的読みやすい一冊となっており、そのうえちくま学芸文庫版は翻訳もわかりやすいように噛み砕いてくれています。

生きていれば誰しもが「いったい何が正しいのか?」と戸惑うことがあります。デカルトも同じでした。しかしデカルトが他の人と違ったのはそこで考えるのをやめず、人生と溢れる才能をフル活用して徹底的に考え抜いたところにあります。本書にはそのための思考の道筋が書かれています。「考える力」の基本を学びたいのなら、必読必携の書です。

13.『パンセ』(中公文庫)

画像出典:Amazon

著:ブレーズ・パスカル 訳:前田 陽一、由木 康

偉大な思想家であるとともに、確率論などを唱えた偉大な数学者でもあるパスカル。彼が遺した文章を集めたのがこの『パンセ』です。

この本の中では「人間死刑囚説」なるものが語られます。パスカルは私たち人間が人生という監獄に囚われて死を待つ生き物なのだと看破します。

そんな絶望的な状況の中で人間が幸せになるにはどうすればいいのか。パスカルは死への恐怖を考えないように、仕事や恋愛、趣味や勉強で気晴らしをするべきだと言います。いわば「人生なんて死ぬまでの暇つぶし」というわけです。こうしたパスカル流の生への冷徹な視線は、つい「人生の意義とは?」などと考えてしまう真面目な人にとってある種の救いになるでしょう。

14.『社会契約論/ジュネーヴ草稿』(光文社古典新訳文庫)

画像出典:Amazon

著:ジャン・ジャック・ルソー 訳:中山元

フランス革命前夜の1762年に出版された、フランスの思想家ルソーの著作。社会において自由であるとは、平等とは、国家と国民のあるべき姿とは、あるいは民主主義とは何か。ルソーはそれらについて丁寧に根気よく論じていきます。

日本という国は「民主主義」や「市民」という概念を輸入して近代国家を作り上げてきました。そのため日本人は「民主主義」や「市民」についてじっくり考える機会が少なかったのかもしれません。本書を含むフランスの古典は、そんな私たち日本人に、市民社会の基礎中の基礎となる考え方を教えてくれます。

4000年国家の礎!中国のおすすめ古典

15.『論語』(ちくま文庫)

画像出典:Amazon

訳:齋藤 孝

儒教の文献の中で特に重要視される四書(『大学』『中庸』『論語』『孟子』)のうちの一冊。中国春秋時代の思想家であり哲学者であり、フリーランスの政治コンサルタントでもあった孔子の言行を弟子たちがまとめたものです。

多くの一流ビジネスパーソンが座右の書としていることからも、人生全般の指針たりうる古典であることがわかります。

2016年10月に教育学者であり、作家でもある齋藤孝訳がちくま文庫から出ています。読もう読もうと思って「でも岩波文庫版はとっつきにくいんだよな」と思っていた人は、この機会に是非中国の古典中の個展に触れてみてください。

16.『大学・中庸』(岩波文庫)

画像出典:Amazon

訳:金谷 治

四書のうち、自己修養こそがリーダーシップにつながっていくのだとする『大学』と、何者にも偏らない倫理的にニュートラルなあり方を説く『中庸』を収録した一冊。中国の歴代の政治家はもちろん、日本の武家も教科書とした書物なだけあり、リーダーシップの王道を学ぶのにはもってこいの古典といえます。

無批判に内容を受け入れるのではなく、「そうは言うけど本当か?」と問いながら読めば、自分なりのリーダー観を養うこともできるでしょう。また「なぜこのような本を読んだ人たちが中国の歴史を作ったのか?」という視点で読めば、中国という国を理解するヒントにもなります。

17.『史記列伝』(平凡社ライブラリー)

画像出典:Amazon

著:司馬 遷 訳:野口 定男

中国史上最初の正史と言われる『史記』を書いた司馬遷が、当時の中国の英雄たちのエピソードをピックアップして紹介したのが本書です。当時の中国の人物や生活、価値観などが垣間見えるという意味で興味深く、また単純に読み物としても面白い古典です。

また『史記列伝』に登場する人物は能や歌舞伎、江戸の川柳などにも登場するので、それらと引き合わせて楽しむのもオススメです。

平凡社ライブラリー版以外には岩波文庫版がありますが、『昭和史』などの名著を持つ作家半藤一利の解説が付いている点で平凡社ライブラリー版をオススメします。

学問の元祖!ギリシアのおすすめ古典

18.『ソクラテスの弁明・クリトン』(講談社学術文庫)

画像出典:Amazon

著:プラトン 訳:三嶋 輝夫、田中 享英

「よく生きること」「無知の知」などの有名な思想を対話篇として解説した古典中の古典。思想の内容はもちろんのこと、それらをとてもわかりやすい論理で展開していくやり方は、論理的思考の基礎を学ぶためのテキストとしても役立ちます。もともとがわかりやすい本なのでどの翻訳でもそこそこ読みやすいですが、新訳として1998年に刊行された講談社文庫版は特に読みやすい翻訳となっています。

19.『歴史』(岩波文庫)

画像出典:Amazon

著:ヘロドトス 訳:松平 千秋

「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスが書いた歴史学最大級の古典のひとつです。そう紹介すると小難しい書物のように感じますが、本書はヘロドトスが実際に世界中を歩き回り、見聞きしたことをメモしたもの。そのため非常に具体的で、読み物としても十分楽しめるようになっています。

まだ学問として体系化されていない時代の歴史として読めば、「歴史とは何か」という非常にメタなテーマについて考えるきっかけにもなるでしょう。

なお東海大学出版会から刊行されている古曳正夫著『読書地図帳 ヘロドトス「歴史」』と一緒に読むと、当時の世界地図と照らし合わせながら『歴史』を読めるので、よりいっそう当時の世界をリアルに思い描くことができます。

20.『ニコマコス倫理学』(光文社古典新訳文庫)

画像出典:Amazon

著:アリストテレス 訳:渡辺 邦夫、立花 幸司

ソクラテス、プラトンに続く古代ギリシャ哲学の代表格アリストテレスの著作。幸福、正義、気前の良さ、人柄の徳、思慮深さや愛や友人の意義など、あらゆる倫理的なテーマについて論じています。

かなりの古典なので手を出しにくいかもしれませんが、もともとある程度読みやすい本であることと新訳によって読みやすくなっているのとで、想像以上にわかりやすい本です。

またアリストテレスの時代には基本的に「先人」というものが現代に比べてほとんどいません。そんな中で独自の切り口から世界や社会、人間を見据える姿勢は、「先人」に溢れすぎている現代の私たちにとって、オリジナルの考え方をするための良いテキストになってくれます。

じっくりと、腰を据えて、古典を読む

古典は得てして難解なものが多く、巷に溢れるビジネス書や自己啓発本のようにとっつきやすいものは稀です。ここで紹介した20冊はその中でも比較的読みやすいものをチョイスしましたが、それでも「単純明快」とはいえません。

しかし難解で複雑だからこそ、そこから導かれるメッセージが多くの人の心に響くのです。まずは一冊、じっくりと腰を据えて読んでみてください。

Career Supli
古典は手が伸びづらいですが、ぜひこの機会に読んでみてください!
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部