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「働きがいのある会社」を見極めよう
転職の失敗の中でも一番不幸なパターンが「入った会社が思っていた組織ではなかった」という場合。これを回避するためには転職活動をしている会社が「働きがいのある会社」かどうかを見極める必要があります。
2016年に株式会社ミライフを設立した佐藤雄佑さんの著書『いい人材が集まる、性格のいい会社』を参考に、「働きがいのある会社」を選ぶための極意を紹介します。
「働きがい」を見極める6つのQ

以下では会社の「働きがい」を見極めるための6つのQ(質問)を挙げて、チェックポイントを解説していきます。転職先の候補に考えている会社がある人は、その会社についてこれらの質問を投げかけてみましょう。
漠然と転職を考えているだけの人は、質問を通じて会社選びの基準を自分の中で作っていきましょう。
●GPTWにランクインしているか?
GPTWとは「GREAT PLACE TO WORK」の略称で、世界約50カ国で働きがいのある会社を調査している専門機関です。アメリカではこの機関が公表する「働きがいのある会社」ランキングにランクインすることが一流企業の証とされています。
日本では2007年から毎年ランキングが発表されるようになりました。佐藤さんはこのランキングについて次のように書いています。
ここにランキングされるような中小・ベンチャー企業はまさに、この「働きがいのある会社」という称号が、いい人材を獲得するための武器になっていることは間違いありません。引用:前掲書p61
公式ホームページにはこれまでのランキングが公表されています。このページにランクインしている会社における働きがいに関しては、GPTWのお墨付きがあるということです。
もちろん「働きがいのある会社」ランキングにランクインしているからといって、万人が輝ける会社というわけではありませんが、会社選びの有力な指標の1つであることは間違いないでしょう。
●ビジョンが明確化されていて、それが実践されているか?
会社におけるビジョンとは「誰のために、何をするのか」です。このビジョンについては転職活動をしていれば必ず調べるかと思いますが、さらに一歩進んでビジョンが経営や現場できっちり実践されているか、浸透しているかという点もチェックしましょう。
言うは易く行うは難し。立派なビジョンを掲げていても、それを起点に事業展開や人事評価などあらゆる部分を構築するのは至難の技です。この至難の技をやり遂げている会社で、自分がその会社のビジョンに共感できるのであれば、転職後も働きがいを感じながら仕事ができるはずです。
●「人を育てる風土づくり」に積極的か?

転職前から「育ててもらう」という受け身の発想では到底いい転職はできませんが、かといって初めから会社自体に人を育てる風土がなければ育つものも育つことができません。どんなに実績や経験のある人材でも、会社が変われば勝手も変わります。
そういう人材をフォローして、本人の能力が発揮されるまで待ったりチャンスを与えたりする風土があるかどうかは、働きがいを考えるうえで重要なチェックポイントです。
例えば佐藤さんが人事時代にリクルートキャリアの人材育成方針として掲げたのは「人は場で育てる」でした。
教育研修に時間とお金を掛けて人を育てるということではなく、経験したことない仕事や役割を意識的に付与して、その経験をもって人を育てていくということです。
引用:前掲書p96
こうした方針をしっかりと風土にまで落とし込めているかは、転職前にきちんと確かめておきたいポイントです。
●リファーラル採用が得意な会社か?
リファーラル採用とは社員による紹介で採用することです。2017年の「働きがいのある会社」ランキングで、従業員100人〜999人部門で3位にランクインした自動クラウド会計システムの「freee」は、このリファーラル採用でエンジニア職の8割とビジネス職の4割を採用しているのだとか。
リファーラル採用を実現するためには、社員が「ウチの会社はいいぞ」と知人友人に勧める必要があります。これは社員満足度が高ければ起こりようのない現象です。なぜならもし知人友人が転職してから「騙された」と感じてしまえば、紹介した本人の人間関係が壊れてしまうからです。
多くの人は会社からいくらインセンティブをもらったからといって、人間関係を賭けることはしません。そのためリファーラル採用が得意かどうかは、その会社の働きがいを表すと考えられます。
●転職・起業・海外移籍に寛容か?
「社員は会社の命令に従って当たり前」という価値観は、終身雇用や年功序列賃金が崩壊した今となっては社員側を理不尽に束縛する考え方でしかありません。この価値観は「会社が一生面倒を見てくれる」という前提のうえにしか成立しません。
このことを自覚している会社は自社が社員にとっての成長の通過点であることを知っています。だからこそ自社に定着してもらうために成長の場を作ろうとします。
またそうした会社に惹かれて集まってきた人たちはいずれ成長して転職・起業・海外移籍を望むようになりますが、あくまで自社が社員の通過点だと自覚している会社はこうした社員の決断を応援する風土を持っていることが多いのです。
したがって転職・起業・海外移籍に寛容かどうかは、働きがいのある会社を見極める1つの指標になりえます。
●メンバー間のコミュニケーション形成に積極的か?
経営をするうえで意思を持って人間関係を優先する会社はやはり強いなと感じます。
引用:前掲書p121
組織における人間関係の質は働きがいを強化し、最終的には組織の生み出す結果の質も向上させます。この流れをモデル化したのがマサチューセッツ工科大のダニエル・キム教授で、「組織の成功循環モデル」と呼ばれます。このモデルは、以下のような順序で組織のパフォーマンスが高まっていくと考えます。
1.関係の質が向上すると、思考の質が高まる。
2.思考の質が向上すると、行動の質が高まる。
3.行動の質が向上すると、結果の質が高まる。
4.結果の質が向上すると、思考の質が高まる。
しかし佐藤さん曰く、多くの会社は結果の質の向上を急ぐあまり、「結果の質→行動の質→思考の質」と逆回転してしまうのだそうです。確かに関係=人間関係の質は目に見えません。だからこそ重要性を自覚し、コミュニケーション形成に力を入れている会社は「強い」のです。
例えばウェディングプロデュース事業などを展開する「CRAZY」には、毎日オフィスにいる全員で昼食を食べるというルールがあります。これは経営の優先順位1位の「健康を第一に考える」と2位の「人間関係を大切にする」が実践された結果です。しかも昼食の内容もきっちりこだわった手作りの自然食。心身に美味しい食事は、自然とメンバー間のコミュニケーションを生み、人間関係の質を向上させています。
自分が生き生き働ける場所を選ぼう
会社選びを間違えると「仕事がつまらない」「上司や同僚と合わない」といった今抱えているのと同じ不満を抱えることになります。そうならないためには事前にここで紹介した6つのQをもとに「働きがいのある会社」かどうかをしっかりとリサーチし、自分が生き生き働ける場所かどうかを見極めなくてはなりません。
それが日々の仕事における楽しさだけでなく、その後のキャリアにも関わってくるのです。

参考文献『いい人材が集まる、性格のいい会社』

[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部