意味のある人脈作り・意味のない人脈作りを分ける4つのポイント

意味のない人脈作りは今すぐやめよう

個人が持つ価値の重要性が増していくこれからのビジネスにおいて、所属している組織に左右されない資産である「人脈」も、今後はさらに重要性を増していくと考えられます。

しかしだからといって、必死になって異業種交流会に参加し、何の脈絡もなく名刺を交換し続けても、そこで手に入れた名刺が人脈になることはありません。人脈とは自分が相手を助けられて、かつ相手が自分を助けてくれる関係を指します。

名刺だけ持っていて、顔も思い出せないような相手は人脈とは呼べません。人脈を資産として活用するためには、意味のある人脈作りをする必要があるのです。

ここでは経営コンサルタントの平野淳士カールさんの著書『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』を参考にしつつ、どんなことに気をつければ意味のある人脈作りができるのかを解説します。

意味のある人脈作りのための4つのポイント

●つながる・つなげる目的を定める

自分が誰かとつながったり、自分が誰かと誰かの接点になったりする際には、それによってどんな問題を解決したいのかをあらかじめ明確にしておく必要があります。

こうした目的がないままつながろうとしたり、つなげようとしたりすれば、相手にはつながるメリットが見えないため、意味のある人脈になってくれません。

例えば自分が特に興味もないのに「○○を紹介するよ」「○○に会っておいた方がいいよ」などと言われてつなげられても、満足するのはつなげた人だけで自分と○○さんは「で、どうしたらいいの?」と困惑するだけです。

逆に自分が新しく家を建てるために「どの工務店に頼めばいいんだろう?」と悩んでいるときに、「ここなら信頼できるよ」と信頼できる友人から紹介されれば、これほど心強いことはありません。

次その友人が困っていた時は、どこかで力になろうと思うはずです。これが人脈作りにおける、つながる・つなげる目的を定めることの重要性です。

●「掛け算」で人脈を差別化する

「△△社の営業部長」という役職に頼って人脈を作っている人は、その役職に別の人が就いた途端、あっという間に人脈を失います。所属しているネットワークにおいてかけがえのない存在になれなければ、重要人物とはみなされないのです。

そのための方法の一つが「掛け算」による人脈の差別化です。例えば営業部に所属していて営業部に人脈があるのは当たり前ですが、経理部にも開発部にも人脈があるという人は比較的少なくなります。

自社に人脈があるのも当たり前ですが、海外の子会社や下請け・孫請けの会社に人脈がある人は少なくなるでしょう。

このようにして営業部×他部署、自社×他社という形で掛け算をしていくと、どんどん人脈が希少性を高くなっていきます。結果ネットワークの中で重要視される存在になることができるのです。

●人間関係のコンフォートゾーンから抜け出す

アメリカの社会学者であるマーク・S・グラノヴェッターは、千九百七十年にアメリカのボストン市郊外在住のホワイトカラー282人を対象に、どのような方法で転職したか、そして転職後の満足度はどれくらいかを調査しました。

その結果、56%が人脈ネットワークを使って職を見つけていましたが、多少知っているだけの人や友人の友人といった「弱い人脈ネットワーク」を通じて転職した人の方が、家族や親友といった「強い人脈ネットワーク」を通じて転職した人よりも満足度が高いことがわかったのです。

また、シカゴ大学ビジネススクールのロナルド・S・バート教授が行った、アメリカの大手情報機器メーカーの管理職284人を対象にした調査によれば、様々なジャンルの人脈を持つ人ほど出世が早いということがわかっています。

つまり職場、部署、職種、年代、性別、人種、学歴、住んでいる場所などが異なる人との関係を大切にしている人ほど、重要な役職に就いていたのです。

どちらの研究も、人脈は自分に近しいメンバーで構成するのではなく、むしろ遠いメンバーで構成する方が効果的だということを示唆しています。

グラノヴェッターの研究は、家族や親友よりも多少知っているだけの人や友人の友人のような人脈の方が、自分に適した職場を紹介してくれることを示していますし、バート教授の研究は自社内に派閥を作ることに躍起になっている人よりも、多種多様な人脈を持っている人の方が成果を上げられるということを示しています。

このように考えると、人脈作りをする際も自分が「楽しい」「心地いい」と感じるいつものメンバーから人脈を広げたり、深めているようでは意味のある人脈は手に入りくいということがわかります。

意味のある人脈作りをするためには、まず自分のコンフォートゾーンから抜け出さなければなりません。そうしてあらゆる点で自分とは違う人たちとつながれる場所に足を運び、そこで多種多様なつながりを作っていく必要があるのです。

●三方よしを実現する

Googleは無数のウェブページと閲覧者をつなげるプラットフォームであり、Amazonは無数の小売店と消費者をつなげるプラットフォームです。このように近年大成功を収めているビジネスモデルは、誰かと誰かをつなげるプラットフォームをいかに構築するかに重きを置いています。

これは人脈作りでも同じで、自分が誰かと誰かをつなげるプラットフォームとしていかに機能するかを考えることが重要になります。その際にポイントの一つとなるのが、利益の配分がメンバー内で公平になっているかどうかです。

例えば十数年前のGoogleが広告を出したウェブページと閲覧者をつなげるたびに、不当に高額な広告料を徴収していたとしたらどうでしょうか。

「そんなにお金がかかるのなら」と他の検索サービスに人が移っていってしまったでしょう。Googleは自社とウェブページ、閲覧者に対して適切に利益を配分したからこそ、ここまで支持されるプラットフォームになったのです。

個人の人脈作りでも同じことが言えます。すなわちAとBをつなげることで自分だけが得をするのではなく、あるいはAと自分、Bと自分だけが得をするのではなく、三者が適切に得をするようなつなげ方を模索することこそが、意味のある人脈を構築するのです。

人脈作りは戦略的に

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名刺交換をしただけで満足しているようでは、いつまで経っても意味のある人脈は構築できません。また自分の肩書きに頼って人脈を作っても、その人脈は会社が倒産したり、自分が転職したりすれば役に立たなくなります。

人生100年時代を迎えた現在においては、遅かれ早かれ、これまで頼りにできていた国や会社を頼りにできないときがやってきます。

そのときに元気で楽しく仕事を続けるためには、心身の健康はもちろんのこと、仕事をくれたり、自分のやりたい仕事に手を貸してくれたりする人脈が必要不可欠になります。

その時になって「名刺はあるけど顔は覚えていない」「転職した途端連絡がつかなくなった」というような人脈ばかりだということになれば、目も当てられません。来たるべきその時に備えて、今から戦略的な人脈作りを始めておきましょう。

参考文献『世界のトップスクールだけで教えられている 最強の人脈術』

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[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部