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IPOで218億ドルを調達
2014年9月、筆者は米国を旅行しており友人の家に滞在していました。当時、中国のEコマース最大手アリババがニューヨーク証券取引所上場。IPOで218億ドル(約2兆3700億円)を調達すると発表しました。
米国のTVニュースでもアリババは大きく取り上げられ、米国人の友人たちも「アリババ、すごい」と感嘆の声を上げていたことを覚えています。
アリババの創業者は中国人のジャック・マー(以下マー)です。
「きっとジャック・マーは天才かビジネスエリートだろう。凡人の自分が彼から参考にできることはなさそう」
マーがアリババの創業者になるまでの軌跡を知る以前、筆者はそのように思っていました。そのため、マーのことを知りたいと思っていませんでした。
しかし、ある日、マーが大学試験に2度不合格となり三輪自動車の運転手として働いた経験があること、ケンタッキーフライドチキンのアルバイト採用試験にすら落ちたこと(24人が応募し、マーを除く他の23人は採用されている)をマー自身が語っているインタビュー動画を見ました。
マーは決してビジネスエリートでも天才でもなかったことが分かったのです。筆者のような凡人にも参考にできる点のある人物だと感じ、マーについて調べ始めました。
調べる中で、いわゆる「落ちこぼれ」だったジャック・マーがなぜ成功をおさめることができたのか。その要因が分かりました。それはジャックマーの思考法です。
講演動画「Jack Ma – How To Become A Billionaire (MUST WATCH!)」を参考に、彼が成功を納めることができたその思考法を解き明かします。
TOP画像:Flickr/Photo by Jolanda Flubacher
IT業界とも無縁、ビジネスエリートでもなかったジャック・マー

画像出典:Wikipedia
IT業界では、ITに精通しているビジネスエリートがIT企業を創業するのが一般的です。しかし、マーはそうではありませんでした。マーのアリババ創業に至るまでの生い立ちを簡単にご紹介します。
1964年 マーは中国広州に生まれました。マーの学生時代は優等生ではありませんでした。とりわけ数学は壊滅的な成績の悪さ。そのせいで2度も大学試験に落ちています。しかし、英語に関しては成績優秀でした。自宅近くのホテルで外国人と会話したり、外国人の観光ガイドを無料で買って出ていたそうです。
1988年 マーは得意の英語で大学試験を一点突破。大学の英語学科で学んだ後、卒業後は大学の英語教師になりました。
1995年 英語の通訳として米国を訪問した際に、インターネットに出会います。その可能性に気づいたマーは中国に帰国後、企業情報サイト「中国イエローページ」を創業。しかし、政府の圧力でイエローページは政府の管轄下に入ることになり、マーは経営権を失います。
1997年 政府の商務部にてホームページ制作を担当。
1999年 アリババを創業。ゴールドマンサックスやソフトバンクから資金を調達しています。
ビル・ゲイツ、ラリー・ペイジ、ジャック・マー…成功者の共通点は「文句を言わない」

Photo by andrew welch on Unsplash
マーは講演の中で著名な成功者が共通して持っている「成功の礎」とも言える思考法について語っています。
「私は、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、ラリー・ペイジなど多くの成功者と交流があります。彼らと、 その他大勢の人との違いについて語りたいと思います。
彼らは
・将来に対して楽観的
・文句を言わない
・常に問題を解決しようとしているのです。
機会は他の人が文句を言っているところにあるのです。もし他の人が文句や不満を言っているのを聞いたら「自分なら解決できるのではないか」そう考えることで機会を生みだせるのです」「Jack Ma – How To Become A Billionaire (MUST WATCH!)」より
マーは、中国の中小企業の多くが自分たちの商品を販売できる場所が十分にないと文句を言っていることに気づきました。
大企業は潤沢な資金があるので世界中の展示会に行って商品を販売できます。しかし、中小企業は資金もなく、展示会に参加できないので国外には商品を販売できません。
しかし、誰もその問題を解決しようとしませんでした。そこで1999年、マーはインターネットの力を借り、中小企業でも商品を世界中に向けて販売できるECサイト「アリババ」を設立することにしたのです。
当時、中国にいる誰もがインターネットでそんなことができると信じなかったとマーは語っています。
マーの思考法を一言に集約すると「問題をどうすれば解決できるのか」
被害者意識で留まるのではなく、自分が直面している現状を自らの手で良い方向に変革するためにはどうすれば良いのか、問い続けるのです。
自らの強みだけではなく、「弱み」も生かす
マーの思考法はアリババのビジネスにも活きていることが垣間見れます。マーはIT業界出身ではないためITの技術面には強くありません。しかし、マーはその一見すると「弱み」であることを強みに転化しています。
アリババのようなECサイトでは、消費者だけでなく商品の出品者にとっての利用のしやすさも重要です。とりわけアリババでは、ITに詳しくない中小企業の経営者が利用しています。
そこにおいて、ITに強くないマーの「弱み」が強みとなったのです。ITに強くないために、中小企業の経営者と同じユーザー目線で出品者にとってアリババが利用しやすいか検討し、改善することができたのです。利用のしやすさはアリババと競合他社を差別化する強みとなっています。
私たちは新しいことにチャレンジする際、つい「知らないから」「スキルがないから」とできない理由を探してしまいがちです。しかし、マーのように「知らない」「スキルがない」ことを逆手にとり強みに変えて挑戦することも可能なのです。
文句を言わずどうすれば解決できるのか考えること

最後に、今後の激動の世界を生きる私たちにとって大きな励みになるマーの言葉で締めくくらせていただきます。
「ビッグデータの時代が到来します。…(略)…皆が同じスタートラインに立ちます。ビッグデータの専門家はいません。ITの専門家は逆に問題に直面するかもしれません。(※過去の経験による既成概念のことを意味していると推測されます)
一番の資産、それはみなさんが若いことです。文句を言わないでください。他の人に文句を言わせておきましょう。
文句を言う人は、そこで立ち止まってしまうだけです。「えーと、○○を持っていなので、○○したことないので…」なんて言わないでください。どうすれば世界に違いを生めるのかだけ考えてください。」
「Jack Ma – How To Become A Billionaire (MUST WATCH!)」より
仕事で、つい何か文句を言いたくなる状況に直面しても「どうすれば解決できるか」という思考癖を持つことで機会を生み出していけるのではないでしょうか。日々の仕事で降りかかってくる難題を機会に変えていきましょう。
