ITエンジニアは外資と日系、どちらで働くべきなのか?メリット・デメリットを徹底比較

外資・日系、結局どっちがいいの?

外資に行くか日系に行くかというのは、ITエンジニアが転職を考えるときの軸の一つ。でもいったいどちらで働くべきなのか、は意外と判断しにくいところです。

外資に行ってからまた日系に転職する人、日系に行ってから外資に転職する人がいることからも、実際に転職してから「違ったな」と思う人が一定数いることは明らか。

まだ“転職回数が増える=キャリアのリスク”である日本においては、転職先の選択は大切なターニングポイントです。無用なリスクを抱えないためにも、外資、日系それぞれのメリットとデメリットを理解しておきましょう。

20代〜30代は外資系企業で働く方がメリットは大きい

メリット デメリット
  • スペシャリストとしての経験、スキルが身につく
  • 能力次第でハイレベルな仕事も任せてもらえる
  • 海外の高感度な情報、技術に触れることができる
  • PIP(業務改善プログラム)のリスクがある
  • 企業によっては、ITエンジニアとしてのスキルアップが見込めない
  • 実は英語力はあまり身につかない

 

上表が、外資系企業で働くメリットとデメリットをまとめたものです。以下でそれぞれ見ていきましょう。

外資系で働くメリット

▶スペシャリストとしての経験、スキルが身につく

これは、外資系企業のITエンジニアはスペシャリストとしてのスキルアップを求められることが多いことによるものです。外資系企業で長く働くと専門的な知識や技術、経験が身につきやすくなります。

GAFAのようなトップ企業になると、専門性もかなり細分化されていて「特定の分野では世界トップクラスの知識と技術をもっているが、ほんの少し違う分野になるとまったくわからない」という人が多いという話も聞きます。

▶能力次第でハイレベルな仕事も任せてもらえる

外資系企業の多くは能力主義。勤続年数が長くても年齢が高くても、能力がなければ上にはあがれません。逆に言えば、能力さえあれば報酬も高くなりますし、より大きな仕事を任せてもらうことも可能です。

そのため同年代の日系企業のITエンジニアでは到底経験できないような仕事も、努力次第で経験できます。

▶海外の高感度な情報、技術に触れることができる

ITの世界においては、日本はアメリカだけでなく、すでに中国にも差をつけられています。そのため日本にしか拠点を置いていない日系企業に比べて、海外から日本に進出してきている外資系企業の方が技術やビジネスモデルという点では優れている可能性が高いのです。

すると本社や他国の拠点から流れてくる情報・技術も、国内で触れられるものよりも感度の高いものが多くなります。これはスキルアップの観点から、大きなメリットと言えます。

外資系で働くデメリット

▶PIP(業務改善プログラム)のリスクがある

PIP(業務改善プログラム)とは、一定期間定められた業績を達成できなかった人に対して与えられる教育プログラムです。しかし教育プログラムというのは建前で、外資系企業では事実上の解雇通告と考えられているところも多いようです。

なぜこんな遠回しなやり方をするのかというと、日本は海外と違って労働者の権利が強く、簡単に解雇ができないため。確かに海外拠点に比べて日本拠点の解雇リスクは低いのですが、外資系企業に入る以上「結果を出せない人間はクビを切られる」という可能性は覚悟しておく必要があります。

▶企業によっては、ITエンジニアとしてのスキルアップが見込めない

「ITエンジニアとして外資系IT企業に入るのに、ITエンジニアとしてのスキルアップが見込めないってどういうこと?」と思うかもしれません。

しかし企業によっては、開発は本国、海外拠点は主に営業と棲み分けているところもあるため、いざ転職しても「ITに詳しい営業」として働くケースが発生するのです。

外資系企業はポジション採用が多いため、入ったあとに「こんなはずじゃなかった!」となるケースは少ないものの、事前に自分がやりたい仕事についてよく考えておく必要はあるでしょう。

▶実は英語力はあまり身につかない

「外資系企業は英語が堪能でないと入れない」「外資系企業に入れば英語力が磨ける」と考えている人も多いかもしれません。確かにマネージャークラスになれば本国とのやりとりが増えるため、英語を使う機会も増えます。

しかしそこまで高いポジションでない場合は、取引先も日本人、上司も日本人というケースも多く、意外と英語を使う場面は少ないのです。英語力を磨きたいという人は、積極的に本国とやりとりするなど、自発的な行動が求められます。

外資系は若手が経験・スキルを磨くのにもってこいの舞台

これらのメリット・デメリットを総合すると、外資系は20代〜30代の若手が経験・スキルを磨くのにもってこいの舞台だと言えます。

というのも、年功序列の慣習がいまだに根強い日本では、若手が得られるチャンスも少なく、能力があってもキャリアアップできなかったり、報酬が低いままだったりしますが、外資系ならそうした問題は軽減されます。

また仮にPIPの対象になったとしても、若いうちなら生活にかかるお金も比較的安く、かつ巻き返しをはかれるからです。

40代以上は日系企業で働く方がメリットが大きい

メリット デメリット
  • 解雇されるリスクが低い
  • 比較的、安定したキャリアを構築できる
  • 福利厚生が充実している
  • 年功序列の慣習が根強い
  • スペシャリストとしての経験、スキルが身につきにくい
  • 配属リスクが高い

こちらが、日系企業で働くメリットとデメリットをまとめたもの。以下同様に一つずつ見ていきましょう。

日系で働くメリット

▶解雇されるリスクが低い

PIPがある外資系企業に対し、日系企業では労働者を辞めさせるのには余程の理由が必要です。そのため、いわゆる「窓際族」のような人材が残ってしまうのは日系企業の問題ですが、その代わり自分が解雇されるリスクが低いのはメリットと言えます。

▶比較的、安定したキャリアを構築できる

解雇されるリスクが低いので、一定期間業績が振るわなかったり、多少のミスをしてしまっても、キャリアアップできるのも日系企業のメリットです。大企業になればなるほど勤続年数と役職がほぼ比例している会社も増えていきます。この点は外資系企業にはない文化です。

▶福利厚生が充実している

GAFAのような超一流のIT企業は福利厚生が非常に充実していることで知られますが、ほとんど福利厚生らしい制度がない企業も少なくありません。

一方で日系企業は住宅補助や社宅制度やフレックスタイム制などをはじめ、福利厚生が充実している会社がたくさんあります。そのぶん収入も低くなる傾向にありますが、長く勤めるなら福利厚生が充実している方がいいという人もいるのではないでしょうか。

日系で働くデメリット

▶年功序列の慣習が根強い

ここまで何度も書いてきたように、日系企業にはまだまだ年功序列の慣習が根強く残っています。そのためどんなに能力が高くても、「昇進するのは○年目の先輩が先」「今回の案件は、まず○年目に担当させたい」といった話になりがちです。

裏を返せばコツコツ勤め続けていればチャンスが回ってくるわけですが、この点をどう考えるかは自分次第でしょう。

▶スペシャリストとしての経験、スキルが身につきにくい

スペシャリストとして働くことを求められることが多い外資系企業に対し、日系企業のITエンジニアはジェネラリストとして働くことを求められる傾向にあります。ITエンジニアとしての仕事以外に、見積書や提案書を作ったり、営業担当に同行したり……さまざまな役割を担う必要があるのです。

スペシャリストとして自分の腕を磨いていきたい、という人にとってはこの点がデメリットになります。

▶配属リスクが高い

ポジション別採用が基本の外資系企業に対し、日系企業はいったん採用してからポジションを決めるところがたくさんあります。そのため「この会社のこのポジションで仕事がしたい」と思っても、まったく関係のない部署に配属になるリスクがあるのです。

「それでもいいからこの会社で働きたい」という人には気にならない点かもしれませんが、明確なキャリアプランに基づいて転職をする人にとっては、かなり大きなデメリットと言えます。

日系には40代以上がこれまでのノウハウを生かして働きやすい環境

雇用の安定性、年長者の優位性といった点を考えると、日系企業はすでにキャリアをある程度積んできた40代以上のITエンジニアの方が働きやすい環境だと言えそうです。

また年齢が上がるほど、企業もマネジメント層を採用する傾向にあるため、前述したような総合職採用よりもポジション別で採用する企業が多くなります。したがって、これまでのノウハウを生かしやすいのも、40代以上と言えるのです。

自分の年齢・スキルに応じた選択を

外資に行けば誰もがスキルアップできるわけではなく、日系にいれば誰もが安定したキャリアを歩めるわけでもありません。

大切なのは、その会社が今の年齢やスキル、もしくは性格に合っているかどうかです。そこを間違えれば、社会的に評価が高い企業でも、自分にとっては働きにくい職場になってしまいます。

外資と日系という軸は、あくまで転職先選びの基準の一つでしかありません。「自分が転職先として選ぶべきなのは、どんな会社なのか」は、転職エージェントなどの専門家に相談しつつ、じっくり時間をかけて考えましょう。

[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部