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ブラック企業での経験は無駄じゃない
いわゆるブラック企業で働いているITエンジニアは少なくありません。仕事に追われる日々のなか、転職を考えたことはあっても「こんな会社でこんな仕事をしてる自分じゃ、どうせロクな会社に入れない」と諦めてきた人もいるのではないでしょうか。
でも、実はブラック企業での経験は、転職に役立つことが多いのです。自分のキャリアを、そして人生を諦めたくない。
そう思う人は、ぜひここで紹介するブラック企業での経験が転職に生きる理由を知り、新たな一歩を踏み出しましょう。
「長時間労働なんて当たり前」の心と体は必ず役立つ

急な仕様変更が入って終電帰りなんて日常茶飯事。取引先でトラブルが起きれば休日出勤も当たり前で、そうでなくても仕事が終わらないから土日は会社に出ている。1ヵ月の残業時間はもう把握していない……。
このように長時間労働が当たり前の働き方は、心身ともに大変なことと思います。しかしハードな労働環境に耐え抜く心と体を持っていると、特に若手は転職で有利に働きます。
「転職先でも働きまくれってこと?」と思うかもしれませんが、それは間違い。ブラック企業からブラック企業に転職しろ、という意味ではありません。
普段ホワイトな職場でも、納期が迫ってきたり、急なトラブルに見舞われたりすれば、一時的にスケジュールがタイトになり、残業時間も膨らむものです。
そのときにほとんどずっと9時出勤、17時半退社を貫いてきた人は「こんなに残業するなんてあり得ない」と心身ともに大きなストレスを感じます。
しかし「長時間労働なんて当たり前」というブラック企業で生き抜いてきた人は、それくらいの状況ではストレスにさえ感じません。
むしろ「終電前に帰れるんだから早いくらいだ」とポジティブに捉えられる人もいるでしょう。
ハードな労働環境で鍛え抜かれた心と体は、「いざという時に頼りになる人材」としてのアピールポイントになるのです。
「知らない間に何でも屋になってた」は重宝される
1人部署、1人プロジェクトリーダーはまだ序の口で、仕事ができる人間はもっとたくさんの部署やプロジェクトを任される。知らない間に単なるITエンジニアの枠を超えて、何でも屋になっていた……。
ブラック企業はそのハードな労働環境ゆえに、いつも人手不足。だから1つの部署やプロジェクトを大人数で担当させるのは難しく、少人数か1人で担当させることになりがちです。
どんどん人が辞めていくので「やり方がわからない……でも知っている人はすでにいない」なんてことも珍しくありません。
勤めている時は「なんで自分がこんな仕事をしなくちゃならないんだ」と怒りさえ覚えるかもしれません。しかしこれも、ほかの企業では意外なほど重宝される経験です。
なぜならとくに日本の企業というのはITエンジニアにスペシャリストとしてのスキルよりも、ジェネラリストとしてのスキルを求める傾向が強いからです。そのためたとえば、
・業界、分野を問わず、会社が受注した案件をかたっぱしから担当していたので、さまざまな知見をもっている。
・外部向けだけでなく社内向けのプログラムやシステムの構築の経験もあり、社内導入のための資料作りやセミナーのノウハウももっている。
・営業や営業事務の経験もあるので、開発〜販売までの一連の流れを理解している。
といった知識や経験、ノウハウがあれば、それだけ転職で有利になる可能性が高いのです。ブラック企業で働いている人の中には「何でも屋=器用貧乏」と考えている人もいるかもしれませんが、実際には重宝される可能性は十分にあります。
山ほどの辛い経験は「やりたいこと」「働きたい環境」への道標になる

「あれもやって、これもやって」と言われていれば、そのなかに多かれ少なかれ自分がやりたくない仕事や苦手な仕事が混じっているもの。仕事の絶対量が増せば、そうした不得意な仕事も増えますし、失敗も増えます。
そんなブラック企業での日々には、辛い経験が山ほどあることでしょう。なかには「こんな経験は全部人生の無駄だ」と思っている人もいるかもしれません。しかし実はそれが「やりたいこと」「働きたい環境」への道標になるのです。
たとえば新卒で入ったのがそれなりに働きやすい環境で、辛いこともあるけれど楽しいこともある程度ある会社だった場合、言ってしまえば何も考えなくとも勤め続けることができます。
結果、自分のなかで何がやりたい仕事で、どんな環境で働いている時にストレスなくパフォーマンスを発揮できるのかが明確にならないまま、働き続けることになります。
しかしブラック企業で働いている人は、辛い経験をたくさん積み重ねているぶん、「楽しい」「ストレスが少ない」と感じる場面がレアです。
そのためキャリアをしっかり掘り下げていくと、自分が楽しくできた仕事やパフォーマンスを発揮できた環境を浮き彫りにすることができるのです。
最も幸せな転職とは、応募する人がストレスなく、自分の才能を発揮できる会社に入社できる転職です。ブラック企業で積み重ねられる辛い経験は、そのための礎になるのです。
まずは自分に今何ができるか、何が必要かを知ろう
自分のこれまでの経験を武器に転職できるかどうか。実際のところは、人それぞれ違います。すでに十分な経験を積んでいる人もいれば、あといくつかの経験を積めば転職しやすくなるという人もいます。
それをブラック企業に勤めながら、自分一人で知るのは至難の技。ですから、プロに頼りましょう。転職エージェントなら、業界の情報に精通したプロフェッショナルによるキャリアの棚卸しを無料で受けられます。
自分に今何ができるか、何が必要かを知って、次のキャリアへの一歩を踏み出しましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部