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人事っていったい何をしているの?
企業に就職し、働いたことがある人なら何かしらの形で人事と話したことはありますよね。しかし新卒や転職者の面接など採用の仕事に関わっていることは知っていても、その他の人事の仕事って意外と知らないのではないでしょうか。
もしかすると、人事担当者のキラキラとした笑顔とともに内定の通知を受けた「採用」の場面の印象から「楽しそう」というイメージを持っていませんか?
確かに採用は人事の大切な仕事ですが、その他にも様々の仕事があります。そして多様なスキルが求められ、同時に責任ややりがいもたくさんあるのです。ここではそんな人事の仕事について詳しく解説します。
人事の仕事を知ろう!

企業によって違いはあるかと思いますが、人事の仕事内容を一覧にすると
採用
評価・配置・異動
人材育成
給与
労務・厚生
職場の活性化支援
の6つに分けられます。今回はこのうち給与、労務・厚生以外の4つについて解説します。
●企業を支える人材を掴め!「採用」
「人事の仕事」と聞いて、多くの人が最初に浮かぶであろう「採用」。採用の仕事の最終的な目標は「人材確保を通じて企業の経営目標や経営ビジョンを実現すること」にあります。そのため行き当たりばったりで採否を決定しているわけではありません。
企業の目標やビジョンを前提に、「今、自分の会社にはどんな人材が何人必要か?」を深く考え、そのような人材を集めるための方法や評価基準などを検討する必要があります。これを「採用計画」と言います。綿密な採用計画なくして採用の成功はありえません。
採用の方針を決定したら、そこからは就職活動サイトへの出稿や求人ページの作成、説明会やセミナーなどを通じた候補者集めが始まります。有名企業ならともかく、無名企業の場合は、まず優秀な人材に自社を知ってもらうために知恵を絞ります。
候補者が集まれば実際の筆記試験や面接などを実施し、採否を決めます。「内定」を候補者に伝えるのも人事の仕事として多いのでしょう。しかし、採用を決めたからといって相手が必ず入社してくれるとは限りません。
優秀な人材であればあるほど、多くの企業が入社してもらいたい人材です。人事担当者は内定者が自社に入社してもらえるように、社員との交流などを通じての入社への動機付けをする必要があります。「採用」と一口に言っても、実に長期間にわたり様々な仕事があるのです。
●モチベーションをマネジメントせよ!「評価・配置・異動」
社員の実績を適切に評価し、それを踏まえた効果的な配置や異動をするのも人事の仕事です。実際に企業で働いていれば理解できるかと思いますが、評価・配置・異動の全てが社員のモチベーションに直結するのです。一生懸命努力して結果を出している社員がいるのに、それを正当に評価するシステムが整備されていなければ、優秀な人材が社外に出て行ってしまうかもしれません。
一方、「この仕事は自分に向いていない」とモチベーションが下がっている社員を別の部署に異動させて気分を一新してもらうこともできます。評価や配置、異動がどのような影響を社員に及ぼすかを慎重に検討し、社員が高いモチベーションで働けるような環境を整えるのが人事の役割です。
社員のパフォーマンス、さらには会社の業績に関わる可能性があるモチベーション。それをコントロールする人間は上司だけではないのです。そう考えると、「評価・配置・異動」は人事の仕事の中でもとても重要なものと言えます。
●優秀な人材を作りだせ!「育成」
社員の能力を最大限に伸ばすためにも、「社員が成長する仕組みづくり」は人事の重要な仕事の1つです。社員の能力を育てることも「採用」の仕事と同じで「社員の成長を通じて企業の経営目標や経営ビジョンを実現すること」が最終的なゴールです。企業の成長のために、社員にどんな能力を身につけていって欲しいのかを考え、どんな育成システムが必要なのかを考えていかなくてはなりません。
OJT(On the Job Training、職場内研修)という育成方法はご存知ですか?上司や先輩社員が実際の仕事の中で部下や後輩の教育・指導に当たる育成方法です。育成の仕事に関わる人事担当者は「誰に誰を教育係としてつければ良い効果が生まれるのか」「教育係にはどんなフィードバックを与えていけばいいのか」などに頭を悩ませます。ここでも考えるべきことは多岐に渡るのです。
またOJTでは教育係との相性だけでなく、先輩社員の能力によって教育される側の成長度が大きく変わります。本来、このような差は望ましくないため、全社員が揃って知識やスキルを習得できるOFF-JT(職場外研修)を実施している場合もあります。
●もっと働きやすい場所に!「職場の活性化支援」
配置や育成以外の面で、社員同士のタテのつながりやヨコのつながりを活性化させる仕組みを作るのも、人事の仕事です。社員旅行や運動会などの交流イベントの開催、自社のSNSなどを利用し情報発信などを行う企業もあります。現行の社内制度、働き方に対する満足度調査、社員のモチベーション診断なども行います。また、経営理念の浸透度調査を人事主導で行う企業もあるようです。
必要なのは、社員一人ひとりが「居心地のいい会社」「働きやすい会社」と思えるようなアクション。経営陣を巻き込んでメッセージを発信したり、オフィスのリフォームなどで社員間交流を活性化させたりする場合もあるでしょう。
今後の人事に求められるもの

ITの発達による社会変化の加速化、グローバル化による人件費の問題や顧客ニーズの多様化など、企業を取り巻く環境は大きく変わっています。高度経済成長期の人事の仕事において重視されていたのは、どちらかといえば「現状維持」型のマネジメントでした。
しかし今後の人事においては「業績向上」「企業の成長」を大前提としたマネジメントが求められます。企業理念や事業計画を念頭に置いた採用計画や育成計画を立案し、実行する。そうした積極的なあり方が求められているのです。
そのため「優秀な人事」には単なる利害調整スキルだけでなく、「自社の抱える人的課題はどこにあるのか?」という課題設定スキルや、その課題を解決するために効果的な施策を立案するための企画力、そしてそれを実現するための実行力などが必要とされます。
逆に言えば人事としてスキルを磨いていけば、こうした他の場面でも活躍できるスキルを身につけることができるでしょう。
人事という仕事の魅力

人事の最大の魅力は「人と繋がれる仕事」である点です。人と人を繋ぎ、人の人生に関わり、人を育てていく。自分が関わった社員が大きな成果をあげ、飛躍的に成長していけば、大きな充実感を得ることができますし、それが企業全体の活力につながればさらに大きな達成感を味わえ、「楽しい」と感じられるはずです。
勘のいい人ならもう分かっているかもしれませんが、人事担当者は嫌われ役を引き受ける場面もあります。しかし自分の信念やビジョンにしたがって行動すれば必ず自分の成長につながっていきます。これをきっかけに人事の仕事に興味を感じたら、ぜひ自分なりにもっと調べてみてはいかがでしょうか。
参考文献『マンガでやさしくわかる人事の仕事』
