本音は0.2秒で見抜ける!微表情からホントのキモチを知る技術

相手の本音、知りたくない?

「本音と建前の使い分け」は社会人の常識。しかし誰でも「相手の本音さえわかればもっと人間関係が楽になるのに」と思ったことはあるはずです。実はこの「他人の本音」を読み取る方法があるんです。その名も「微表情」。微表情は何かしらの感情が沸き起こった時にわずか0.2秒の間に顔に駆け抜ける「本音」です。

ここでは米国表情学の権威が制定する「FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)」の数少ない日本人認定コーダーの一人、清水健二さんの著書『微表情(0.2秒のホンネ)を見抜く技術』を参考に、他人の感情の読み取り方を解説します。

相手の本音は「顔に書いてある」

清水さんによると微表情の定義は「抑制された感情がフラッシュのように一瞬で現れては消え去る微細な顔の動き」。そのスピードは0.2秒以下で、速いものでは0.1秒や0.05秒の場合もあります。微表情は私たち人間の無意識に埋め込まれた表情の変化なので、偽ることができる普通の表情とは違い、本人の本音がそのまま表れてしまうとされています。

●まずは「中立の表情」を知る

微表情を読み取るためにはまず相手の「中立の表情」を把握しなければなりません。これはいわば「無感情の時の表情」です。例えば「目尻の笑いジワ」は「幸福」の微表情の特徴ですが、もともと笑いジワのある人の場合は特に感情がなくても笑っているように見えます。「鼻にシワを寄せる」のは「嫌悪」の感情を示しているとされますが、何かと鼻にシワを寄せるクセのある人は本人が「幸福だ」と思っていても、「嫌悪」の表情になってしまいます。

まずは相手のニュートラルな表情を知る。本音を読み取るには、そのための観察をしておかなくてはなりません。

●「感情のシグナル」と「会話のシグナル」を見分ける

顔の動きには「感情のシグナル」としての機能と「会話のシグナル」としての機能があります。とりわけ眉の動きは会話のシグナルとしてよく使われる傾向にあり、驚きや困惑、怒りや悲しみなどを聞き手に対して積極的にアピールします。これは「伝えたくて見せている表情の変化」なので、本音かどうかはわかりません。

一方で感情のシグナルとして使われる微表情は、感情を相手に悟られないようにすればするほど微細かつ瞬間的な表情の変化になります。この2つを混同せずに見分けることで、より本音に近づくことができます。

■その微表情が示す本音はコレだ!

以上を前提として次の表を見てください。

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※各微表情の特徴はまとめて表れることもあれば、単独で表れることもある。

これは清水さんの書籍を参考にして、生まれや育ち、国籍や民族の区別なく通用するとされている7つの感情と、それに対応する微表情の特徴をまとめたものです。微表情は普通の表情や会話のシグナルと混同しやすいため、この表を完全に暗記するだけで本音が丸見えになるわけではありません。しかしここに挙げられている「眉」「目」「口」を意識して観察するだけでも、他人の感情が一気に読みやすくなるはずです。

相手の笑顔、愛想笑いじゃないですか?

微表情と混同しやすいものに「愛想笑い」があります。世の中には演技の上手い人がたくさんいて、本音を愛想笑いで巧みに隠しています。もちろんこうした作られた表情は人間関係を円滑に進めるためには必要です。しかし愛想笑いを素直に受け取ってしまうと、大きなトラブルに発展する可能性もあります。

例えば本当は怒っている取引先の担当者が、愛想笑いをしながらクレームを言ってきたとします。ここで素直に「笑っているから大して怒っていない」と判断して対応してしまうと、相手の怒りをさらに煽ることになるでしょう。本音の読み間違いは、人間関係に致命的なヒビを作る危険があるのです。

このような事態を防ぐために、愛想笑いを見抜くための7つのチェックポイントを覚えておきましょう。

1.非対称性…本当の笑顔は左右対称、愛想笑いは非対称。
2.継続時間…本当の笑顔は0.5秒から4秒、愛想笑いはそれ以上続くことがある。
3.使われる筋肉…本当の笑顔は目の周りの筋肉、眼輪筋が使われる(目が笑う)。愛想笑いでは使われない。
4.笑顔の消え方…本当の笑顔はゆっくり消える、愛想笑いは突然表われ、突然消える。
5.笑い方…愛想笑いでも眼輪筋を使える人がいる。しかしその場合も本当の笑顔に比べて「笑いすぎている」傾向にある。
6.シンクロ度…本当の笑顔は目と口の動きがシンクロする、愛想笑いではズレる。

「6つもあって大変」と思うかもしれませんが、1つずつ観察するクセをつけていけば、徐々に簡単に見分けられるようになっていきます。

本音を読み取れば解決策が見えてくる

「相手が隠そうとしている感情を見透かすなんて、なんだか悪いことをしている気になる」と感じる人もいるかもしれません。しかし相手の本音に無頓着なまま、いつまでも向き合わない方がよっぽど無責任で悪いことです。

男女の関係を例に挙げましょう。夫婦関係や結婚生活の研究の権威であるジョン・ゴッドマン博士によると、夫婦喧嘩のときに「軽蔑(特に男性)」「嫌悪(特に女性)」の表情が観察できた場合、90%の夫婦が4年後に離婚するとされています。

仮に本当は失いたくないパートナーに対し、売り言葉に買い言葉で暴言を吐いてしまったとします。その時に微表情にせよ、それよりも現れる時間の長い表情にせよ、「軽蔑」や「嫌悪」の表情が現れているのを見過ごしてしまったら……。

結果は火を見るよりも明らかです。しかし微表情を意識することで相手の本音に気づいて素直に謝れば、二人の関係を修復する解決策も見えてくるはずです。コミュニケーションが破綻する大きな原因は「相手が何を考えているかわからない」からです。それさえわかれば問題の解決はずっと簡単になります。

「微表情を読む」と「心を読む」は別モノ

最後に微表情を読めるようになることで陥りがちな落とし穴について解説します。それは「感情=心」であるという思い込みです。感情とは前述の通り「幸福」や「嫌悪」であり、微表情はその結果として現れる顔の動きでしかありません。仕事中に幸福の微表情を見せていても、それだけでは仕事が楽しいからなのか、あるいは家に帰ってから観るDVDが楽しみだからなのかはわからないのです。

こうした心を正確に読み取るためには次の3つをいずれかを実践しながら探っていく必要があります。

1.読み取った感情について、相手に尋ねる。
→最も簡単な方法だが、デリケートな状況の場合は要注意。

2.感情の目的を理解し、目的達成をサポートしてやることで本音を引き出す。
→例えば「軽蔑」の目的は「優越感の主張」です。相手が軽蔑を感じているものを予測し、優越感を刺激してやると本音を引き出すことができます。

3.視線の向き・言葉・微表情などを総合的に観察する。
→総合的な観察によって、感情の奥にある心を推測します。

観察すれば、見えてくる!

微表情を使ったからといって魔法のように相手の本音を見透せるわけではありません。しかし感情や心を読み取るために徹底した観察を続ければ、必ずコミュニケーションは円滑になり、人間関係は楽になります。相手をしっかりと観察する努力は必ず報われるのです。

参考文献『微表情(0.2秒のホンネ)を見抜く技術』
Career Supli
ウソを見破るための表情に興味がある人は海外ドラマ『Lie to me 嘘の瞬間』がオススメです。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部