全米エリートが絶賛する究極の能力「グリット」を身につけよう

全米から引っ張りだこの心理学者が明かす「究極の能力」

私たちが人生で成功するために必要な「究極の能力」とは何か。そう問われてどんな答えを返しますか?その答えを科学的な見地から「やり抜く力(GRIT)」だと結論づけたのは、この研究でアメリカで「天才賞」とさえ呼ばれる「マッカーサー賞」を受賞したアンジェラ・ダックワースさんでした。

ここではビジネス、スポーツ界のみならずホワイトハウスや米国陸軍士官学校、経済協力開発機構(OECD)までもがアドバイスを求める彼女の著書『GRIT やり抜く力』から、この能力の重要性と身につけるための方法について紹介します。

「成功する人」の共通点は「やり抜く力」だ

「成功のために必要な究極の能力は?」と問われて「才能だ」と答える人も多いでしょう。しかしダックワースさんが行った米国陸軍士官学校やグリーンベレーとの共同研究によれば、才能と成果は必ずしも結びつかないことがわかっています。

米軍陸軍士官学校で行われる7週間にも及ぶ厳しい基礎訓練「ビースト・バラックス」にしろ、グリーンベレーで行われる過酷な選抜試験にしろ、それらをやり遂げて優秀な成績を残すのは「才能がある」「有望だ」とされた人ではなく、そして「体力」「適性がある」とされた人でもなく、挫折しても諦めずに「やり抜く力」を持った人たちだったのです。

これは軍隊だけに限りません。ダックワースさんがシカゴの公立学校と行った数千名の高校二年生に対する調査によれば、「やり抜く力」が高い生徒ほど進学率が高いことがわかっています。

またアーティストやビジネスパーソンに対するインタビューでも、多くの人が「情熱を維持し、粘り強く続ける力」を成功のための条件に挙げています。逆にこれがなければ、いくら才能や適性があったとしても成功にまでは辿りつけないのです。

ではやり抜く力とは何か?

Army Cadet Hands
こんな風に言うと「ではがむしゃらに頑張ればいいのか?」と思うかもしれません。その答えはNOです。やり抜く力は瞬発力ではなく持久力だからです。仮にがむしゃらに頑張って成果が出たとしても、それを何年も続けることができないのであれば「やり抜く力がある」とは言えず、大きな成功を手にすることもできません。

ではやり抜く力のあるなしは、どのように把握するのでしょうか。それにはダックワースさんが米軍陸軍士官学校のために開発した以下の「グリット・スケール」を使います。

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※当てはまる箇所の数字に丸をつける。
引用:『GRIT やり抜く力』p83

この10項目に対し、自分の周囲の人と比べてどうかを基準に自分で点数をつけていきます。その合計を10で割って出た数値が「グリット・スコア」と呼ばれるものです(最高値は5)。

グリット・スケールは大きく「情熱」と「粘り強さ」の項目から構成されており、奇数項目の点数を5で割れば「情熱」のスコアが、偶数項目の点数を5で割れば「粘り強さ」のスコアが算出できます。

このグリット・スコアは「現在の自分が自分をどう思っているか」を反映するため、年齢やタイミングによって変動します。変動するということは、すなわち工夫次第で強化することもできるということです。ではどうすれば強化できるのでしょうか。以下ではやり抜く力の強化に有効なダックワースさんが挙げる4つの要素、すなわち「興味」「練習」「目的」「希望」について見ていきましょう。

「好きでないもの」をやり抜くことはできない

超一流の経営者が将来のある若者に対してスピーチをすると、必ずと言っていいほど「情熱に従って生きよ」と言います。2011年からアマゾンのジェフ・ベゾスなどに匹敵する一流の成功者に対して毎週インタビューしてきたイギリスのジャーナリスト、ヘスター・レイシーさんによれば、彼らは決まって「この仕事が大好きだ」と情熱的に語るのだそうです。

この「好き」という気持ちが持続すればするほど、やり抜く力は高まっていきます。ではどうすれば興味を掻き立てられるものと出会い、興味を持ち続けられるのでしょうか。第一に取り組むべきことを「発見」する必要があります。そのためにまず自分自身にいくつかの質問してみましょう。

「自分はどんなことを考えるのが好きだろう?」
「ついつい考えてしまうことはどんなことだろう?」
「何をしているときが一番楽しいだろう?」

このように「好き」にまつわる自問自答を繰り返すことで、自分が今どんなことに興味を持っているかは簡単にわかります。「発見」ができたら次は「発展」です。興味は一度抱いただけでは、いずれ薄れていきます。

これを防ぐには何年もかけてその興味を掘り下げなくてはなりません。同じ分野の中で繰り返し興味を持ち続けることで、それはやり抜く力につながっていきます。最後に手にするべきは「環境」です。

同じ興味を持つ仲間や先達となるメンターを見つけ、その人たちとつながることで、自分の興味はさらに持続しやすくなります。しかし興味はあくまでスタート地点です。これを結果につなげていくためにはダックワースさんが「意図的な練習」と呼ぶものを積み重ねる必要があります。

上達したければ「意図的な練習」を積め

例えばジョギングに興味を持って、10年間毎日1時間のジョギングを続けたとしましょう。しかしただ漠然と走っているだけでは、何百年走り続けてもめざましい上達をすることはありません。せいぜい体重が減って、健康になるくらいで、オリンピックに出ることはできないのです。

本当に結果を出したいのであれば、タイム測定や心拍数管理などをしながら、適正な目標を立ててそれを達成し続ける必要があります。それこそが「意図的な練習」です。

ダックワースさんは各分野のエキスパートが決まって行なっている「意図的な練習」の3つの流れを次のように整理します。

1.自分の弱点に的を絞って、「ちょっと無理めの目標」を設定する。

2.「ちょっと無理めの目標」を達成するための努力を惜しまず、常に周囲に熱心にフィードバックを求める。

3.改善点を理解したら、うまくできるまで繰り返し練習を続ける。

この3つを読んだだけで苦しくなって吐き気を覚える人もいるかもしれません。しかしこの「意図的な練習」はエキスパートでも連続1時間、一日3時間〜5時間が限界。

強い集中力と体力を使うため、それ以上続けると持続できなくなってしまうからです。したがって「意図的な練習」さえしていれば、短い時間でも十分結果は出るのです。

誰かの役に立つ「目的」を持とう

ダックワースさんがアメリカ人1.6万人に対して行なったアンケートによると、グリット・スコアの高い人ほど「私のやっていることは、社会にとって重要な意味がある」」など他者志向の目的に関連する数値が高いことがわかっています。つまりやり抜く力が高い人ほど、他者(あるいは社会)への貢献に意義を見出しているのです。

これはやり抜く力を持っている人たちが、自分の欲求を持たずに他者や社会のために貢献したいと思っているような聖人君子だというわけではありません。

ペンシルベニア大学のビジネススクール・ウォートンスクールのアダム・グラント教授の研究によれば自分の欲求(=興味)と他者への貢献(=目的)は全くの別物であり、どちらか一方が存在すると他方がなくなるようなトレードのオフの関係性はないということがわかっています。つまり興味だけがある場合、目的だけがある場合もあれば、両方がない場合も両方がある場合も存在するのです。

そしてこのうち興味と目的が両方存在した時にこそ、やり抜く力は最も高まります。この状態になるためには、自分が今興味を持ってやっていることが「誰の役に立つのか?」を考えてみる必要があります。そうして発見した目的こそが、自分のやり抜く力を強化してくれるはずです。

「希望」があるからやり抜くことができる

私たちは「いくら努力しても失敗や苦痛から逃れらない」という経験をすると「学習性無力感」に陥ってしまい、何をしても無駄だと思い込むようになります。これを防ぐには何かとネガティブな要素を見つけて絶望する悲観主義者ではなく、正しい対処さえすればどんな窮地も乗り越えられると信じる楽観主義者になる必要があります。

ダックワースさんが定義する悲観主義者なのか、楽観主義者なのかは次のような質問にどう答えるかによってわかります。

「つぎの状況を想像してください。ひとからやってほしいと頼まれた仕事がありますが、ぜんぶ終わりそうにありません。ではつぎに、そのおもな原因をひとつ想像してください。どんな原因が頭に浮かびますか?」

ここで「自分は何をやってもダメだから」など自分では変えようがない「永続的」で、かつこの場面以外にも当てはまりそうな「不特定的」な原因が思い浮かんだ場合は悲観主義者です。一方「時間の配分を間違えたから」など「一時的」「特定的」な原因が思い浮かんだ場合は楽観主義者とされます。

現在楽観主義者の人はともかく、悲観主義者だとわかった人にはやり抜く力を強化することはできないのでしょうか。そんなことはありません。

楽観主義的なマインドは何度も苦難を乗り越える体験をしたり、意識して楽観的に考えようとすることで手に入れることができます。そうして自分はないかを成し遂げられるという「希望」を持つことができれば、やり抜く力は高まっていくでしょう。

言い訳をするのはやめて「やり抜く力」を伸ばせ

私たちは誰かがものすごい結果を出したのを見ると「才能があったからだ」と考えてしまいがちです。しかしこれはその人を「天才」と神格化することで、自分が何かをやり抜こうとしないことへの言い訳にしているだけです。

本当に成功したいのであれば「やり抜く力」を高めて、努力するしかないのです。「興味」「練習」「目的」「希望」について改めて考える時間をとり、ここで紹介した考え方をもとにやり抜く力を強化していきましょう。

もちろん結果が出るまでは時間がかかるでしょう。しかしやり抜く力があれば、きっと成し遂げられるはずです。

Career Supli
やり抜く力は本当に大事ですね。成功するまでやり続ければ、必ず目標達成できると思います。
[文・編集]サムライト編集部