本記事では、退職にあたって避けられない「退職理由の伝え方」を解説します。仕事を辞めるときのよくある理由から好印象を与える伝え方、逆に伝えないほうがよい理由、円満退職するためのポイントまで、初めて転職する人にも分かりやすくお伝えします。退職理由に悩んでいる人、スムーズに退職したい人はぜひ参考にしてください。
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仕事を辞めるときのよくある理由
正社員だけでなく、パートやアルバイトでも、今の仕事を辞めるにあたって、会社に退職理由を伝えることは避けては通れない道です。
まずは「転職したい」「仕事を辞めたい」と思い至るにあたり、一般的にどのような退職理由があるのかを解説します。
給料条件などが満足でない
退職を検討している人の理由として多いのが、給料などの待遇が悪いという点です。
どんなにやりがいのある仕事でも、一向に給料が上がらないといった現状ではモチベーションが上がらず、結果的に退職の検討に至る人が多いといえます。給料支払いの遅延、サービス残業や休日出勤が常態化して十分に支払われないといった場合もあります。
このような背景には、働きぶりや成果に対する公平公正な評価基準がない、給料体系に問題があるなど、企業側のさまざまな課題が潜んでいます。労働の対価に納得がいかず不満が募ると、退職を考える人が増えてしまいます。
人間関係がよくない
職場の人間関係のつらを理由に退職する人もいます。
良い人間関係が築ければ仕事を楽しく円滑に進められる可能性が高いでしょう。一方で悪化すると仕事がうまく進まないなど非常にストレスを感じることもあるため、人間関係は働く環境に大きな影響を与えるといえます。
中でも、自分より立場が上の上司との関係性に悩む人が多いようです。パワハラや仕事を丸投げするようなやり方の上司に当たると、仕事のモチベーションが上がらず、出社の意欲が低下し、心身にまで影響を及ぼすことも少なくありません。上司に共感できず、それが自らの心身にとっての脅威と感じた人は退職の決意をします。
成長につながらない
向上心が高く自分の成長を大切にしている人ほど、自らが成長できる土壌を求める傾向にあります。
成長意欲が強く備わっている人は高い目標を達成するために力を尽くし、達成したときの喜びを味わうことを労働の意義としています。中には給料などの待遇を度外視しても貪欲に成長を求める人がいるほどです。
このような人は放っておいても自発的に働き続けると思われがちですが、「この会社には自分を成長させてくれる機会や土壌はない」と感じたとき、さらなる成長と刺激を求めて転職を決意します。
やりがいを感じない
目標を達成するのではなく毎日作業の連続のような仕事に就いている人によくある退職理由として、「やりがいのなさ」が挙げられます。
やりがいは働く上で重要な心の支えです。多少つらいことがあっても、やりがいがあれば仕事を続けられるのはもちろん、人によっては給料などの待遇以上に重きを置いている場合もあるほどです。
その人の持っている能力や知識を発揮できないと、仕事に対するモチベーションが下がり、最終的に退職という考えに行き着くのです。
会社の将来性がない
終身雇用が当たり前だった時代から打って変わり、今は不確実性の時代です。ITや人工知能(AI)が急速に普及し、仕事環境や働き方そのものの変化など、さまざまな不確定要素が将来への不安を生み出しています。それは働く人々にとってもひとごとではありません。
売上や業績などの単純な数字で測れる側面以外にも、多様な面から「この企業は将来的に生き残っていけるだろうか」と考えます。時代の流れを受けて今後衰退することが予想される業界に勤めている人は、特にこの将来性を気にする傾向にあります。
将来的な不安がこの先も解消される見込みがないと判断したとき、転職に向けて動き出す人もいるでしょう。
仕事内容が合わない
単純に、仕事内容が自分には合わないと感じてしまうケースです。
たとえば単調な作業を得意とする人が、複雑な設計の仕事に就くといったふうにもともとの素質に合わない仕事に就いていたことが原因になる場合があります。それだけでなく、「実際の仕事が想像していたものと違った」「入社前に聞いていた仕事ではなかった」など入社後のギャップに悩む人もいます。
その結果、自分が本当は何をしたいのかを洗い出すなかで、今の仕事よりもやってみたい仕事が見つかった場合、モチベーションの維持が難しくなり勤務継続が困難になります。
業務量が多すぎる
残業時間や休日出勤の頻度など、長時間労働が当たり前になっている職場での退職理由として挙げられがちなのが、「業務量の多さ」です。近年ではワークライフバランスという言葉もでき、一昔前のように長時間労働による年収アップを目指すよりも、業務量はほどほどにプライベートも仕事と同じくらい大切にしたいという考え方が持つ人が増えつつあります。
さらには「残業代が支払われない」「昇格しても責任が増えるだけでほとんど給料が上がらない」など、労働に対する対価が必ずしも保証されるとは限らない職場があることも要因でしょう。このような過酷な状況が今後改善される見込みがなく、長く働き続けることが難しいと感じて退職を検討する人もいます。
社風が合わない
特に内向的な性格の人の退職理由として挙げられやすいのが社風です。
具体的には「職場が体育会系でノリが合わず、ついていけない」「飲み会が盛んで、必要以上にコミュニケーションを求められる」といった状況に負担を感じることがあります。
それ以外にも「仕事への向き合い方や進め方が合わない」「会社や上司の考え方に共感できない」など、会社の文化にあまりなじめないとき、社風を理由に退職を検討することもあります。
仕事を辞めるときの好印象を与える退職理由の伝え方

ここまでよくある退職理由について紹介してきました。人によって感じ方はさまざまであるように、職場の状況や待遇などあらゆる環境が退職理由に結び付く恐れをはらんでいるといえます。
次からは、さまざまな退職理由の中でも会社に好印象を与える理由とその伝え方を紹介します。「退職時は穏便に事を運びたい」と考える方は、ぜひ参考にしてください。
新しいことにチャレンジしたい
まず1つ目が「新しいことにチャレンジしたい」という理由です。
今の会社ではできない仕事や異なる分野、新しい業界にキャリアチェンジしてみたいという意思を伝えます。そのために資格の取得など人知れず、かげながら努力してきたことを併せて伝えれば、うそではなく悩み抜かれた末に導き出された確固たる意思であることをアピールできます。
このように、辞める理由が今の会社を尊重しつつポジティブなものであれば、「応援したくなる理由」であり、上司に良い心証を与えます。
専門性を高めたい
2つ目が、今のキャリアの延長で「さらに専門性を高めていきたい」という理由です。
どうしてそう感じたのか、今の会社ではなぜそれが実現できないかを具体的に説明しましょう。理由を述べた上で、そのためには職種変更や他の企業への転職が不可欠という論理に一貫性があれば会社としては応援するしかなく、納得感を得やすいでしょう。
家庭の事情がある
3つ目に「家庭の事情」が挙げられます。
家業継承や親の介護の他、子どもの環境を考慮した地元へのUターンなどが当てはまります。これらの事情は当事者にしか分からないことも多く、会社としても安易に反対できません。
その人の人生にとって重要な仕事を変えてまで優先すべき家庭の事情があるという思いは、会社としても引き止めづらい退職理由のひとつです。ただし、本人の結婚や病気、といったうそはいけません。あとで必ずといっていいほど、うそをついたことが判明するからです。
仕事を辞めるときに伝えないほうがよい理由
仕事を辞めるときに伝えないほうがよい理由もあります。退職日まで肩身の狭い思いをすることになってしまわないよう、一度立ち止まって考えてみましょう。
会社への不満
まず、思っていても伝えないほうが良い退職理由の代表にあたるものが「会社への不満」です。
待遇や給料、長時間労働などへの不満は、確かに、一般的な退職理由のランキングでも上位に来るような理由のひとつです。会社に対する批判や不満がストレスとなり、それが退職理由につながる人は決して少なくはありません。
しかしそれだけでは今後改善することを理由に、引き止めに合う可能性があります。また、上司や同僚も多かれ少なかれ会社への不満を抱えている場合も多く、これからも勤務し続ける人にとってはあまりいい気がしないものです。
仕事内容への不満
次に、「仕事内容への不満」が挙げられます。
想像していた仕事と違った、ルーチンワークばかりで重要な仕事を任せてもらえないなど、仕事そのものに不満を感じて退職を検討する人もいるでしょう。
しかし会社や上司の立場からしてみれば、「まだ仕事し始めて日も浅いのに、あっさり諦めるのか」と、継続力や忍耐力のなさ、ひいては社会人としての未熟さを指摘する理由にすげ替えることができるのです。また、その仕事に就いて精一杯頑張っている人からしてみれば、やはりいい気はしません。
これらの理由は表向きには「他でやりたいことがある」などポジティブな理由に置き換えることで、会社の納得感を得やすくなります。
人間関係への不満
最後は退職理由の中でも上位に挙がる「人間関係への不満」です。
それを理由にしたところで「どの職場にだって合わない人はいる」「次の転職先でまた嫌な人に当たったらまた辞めるのか」など、辞める理由がないと説得される可能性はもちろん、異動の提案によって退職理由を無効化とされかねません。
一方、退職理由としてやり玉に挙げられた同僚たちが嫌な気持ちになることも想像に難くありません。人間関係への不満は、それ単体では退社理由としては弱いとるでしょう。
仕事を円満退社するためのポイント
ネガティブな理由は円満退社の障害になり得るため、本音と建前を上手に使い分けることが求められます。
退職する側としては、少しでも跡を濁さず気持ちよく去りたいもの。最後に、退職願いから退職日当日まで、可能な限りスムーズかつ穏便に過ごすために欠かせない4つのポイントを紹介します。
これらの気遣いは退職する人から会社に残る人々へのマナーでもあります。ぜひ押さえておきましょう。
前向きな退職理由を伝える
円満退職できるか否かは、退職理由の伝え方にかかっているといっても過言ではありません。
「給与待遇に不満がある」「人間関係がよくない」「会社の将来性に不満がある」などさまざまな本音はあると思いますが、ここはぐっと我慢して、前向きな退職理由に置き換えてください。社員から退職を申し出られた場合、会社としては不満解消を理由に引き止める可能性がありますが、つい応援したくなるようなポジティブな理由ではそうもいきません。
例えば、以下のように置き換えると効果的です。
・仕事内容に不満があるケース
「ずっと営業として目標を追い続けなければならないプレッシャーがつらいので退職します。」
↓
「アパレルの営業活動でお客様と関わりニーズを伺う中で商品企画に携わりたいと思うようになり、特に興味のあるスポーツ用品メーカーの企画職にチャレンジしたいと思っています。」
・業務量や待遇に不満があるケース
「サービス残業や休日出勤が多く、プライベートを充実させたいので退職します。」
↓
「子どもが来年で小学生になり、高齢で病気がちの両親の介護も視野に入れたいと考えた結果、地元へのUターンを決めました。」
直属の上司に直接伝える
退職理由を明確化にしたあとは、いよいよ上司に伝えます。ここでのポイントは、まず直属の上司に申し出ることです。このとき上司の人事決裁権の有無は問いません。またその際はメールではなく、1対1の時間を作って必ず口頭で進めるのが重要です。
直属の上司に退職の意思を伝えたあと、上司から課長や部長などさらに上位役職者への報告を行い、最終的に人事部に伝える流れが一般的です。直属の上司を飛び越して、一足飛びに上の役職者へ報告すると、上司の管理能力が問われるほか、間接的にあなたの退職を知った上司は快く送り出そうという心境から遠のいてしまいます。
同じ理由で、会議や打合せの場で上司に話を通さず突然発表するのもマナー違反です。退職理由はまず直属の上司に伝え、そのあとの報告の流れは上司の判断に委ねましょう。
後任への引き継ぎを行う
退職が決まったら後任への引き継ぎを行います。
あなたが退職したあとも、あなたが担当している仕事は誰かが引き続き行わなければなりません。そのために自分の仕事を後任者に全て引き継ぎ、退職後も周りに迷惑がかからないように段取りしましょう。
業務リストを作成し、わかりやすくファイルにまとめるなど、引き継いでくれる側への配慮や工夫も大切です。担当顧客や取引先へのあいさつや後任の紹介を行うなど、退職したあとも問題なく業務が回るよう準備しておきます。退職前にまとまって有給休暇を消化する際は、そのせいで引き継ぎ業務が滞らないタイミングを見計らうことも大切です。
最低1ヵ月前には伝える
今の会社に不満があったとしても、「今すぐ辞めたい」と突然切り出すのは会社にとって非常に迷惑です。
業務の引き継ぎや後任の異動など、組織体制を整えることを考えると退職希望日の1ヵ月~3ヵ月前には伝えるのがマナーです。会社によっては独自ルールを定めているところもあります。会社規定にのっとり余裕を持って伝えることを心がけてください。
スケジュールに余裕を持つ
退職にあたっては業務の引き継ぎ、残務処理、社内外へのあいさつなど、やることが山積みです。
十分な引き継ぎができないと判断されると最悪の場合、退職日の延期を打診されてしまう可能性があります。早めにスケジューリングを行い、余裕を持って行動してください。そのためにも退職日は可能な限り会社の繁忙期は避けるなどの配慮も必要です。
転職活動はこっそり行う
在職中に転職活動を行う場合は、表立った言動は控えるべきです。
うっかり同僚に話してしまい、「あの人退職するらしいよ」と社内でうわさが広まれば、万が一退職を取り消して残留することになったとき周囲からの印象が悪くなるでしょう。それが上司の耳に入れば混乱や不信感を招き、退職のハードルが一気に上がってしまう可能性があります。
どんなに気の知れた同僚であっても転職活動をしていることは伏せ、転職が決まったときはまず上司に話を通すようにしましょう。
人間関係や待遇、仕事内容に不満があっても、会社や周りが応援したくなるような理由を伝えることで円満退職が実現します。キャリアの専門性を高めたい、新しい領域や仕事にチャレンジしたいなど前向きな理由を伝え、気持ちよく職場を去るようにしましょう。
まとめ
会社に不満があって退職するとはいえ、できることなら波風を立てないで穏便に退職したい方も多いことでしょう。
「うまい退職理由が思い浮かばない」「今の仕事の辞め方が分からない」そんな方には転職エージェントのキャリアドバイザーへの相談をおすすめします。退職理由の相談やトラブルを起こさない仕事の辞め方について、プロからアドバイスをもらうことができます。
円満退職は転職を成功させるための第一歩でもあります。本記事で紹介したポイントを参考に、スムーズな退職と転職をスタートさせましょう。
[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部