2021年版「女性が活躍する会社BEST100」上位8社の女性活躍推進施策とは

日経BPでは、522社から得た回答をもとにした「女性が活躍する会社BEST100」を、『日経WOMAN』6月号で発表しました。このランキングは、「働きがい」「働きやすさ」の2つの観点から、企業における女性社員活用の実態を「管理職登用度」「女性活躍推進度」「ワークライフバランス度」「ダイバーシティ推進度」の4つの指標で採点し、その総合スコアに基づいて順位付けされています。

今回は、同ランキング上位8社の「女性活躍推進」の戦略と現状をレポート。2016年4月に女性活躍推進法が施行されてから5年。リーディングカンパニーでは、劇的な変化が起きています。

【8位】髙島屋

顧客の8割、従業員の7割が女性と、女性が感性を発揮し活躍していくことが重要な経営戦略となる髙島屋。そんな背景もあり、同社の女性活躍推進の歴史は1986年頃からスタートしています。

例えば、9つの勤務パターンからセレクトできる育児勤務制度、子どもの学校行事に参加する際に有給とは別に取得できるスクールイベント休暇、出産・育児等で退職した場合に優先的に再雇用する制度など制度面も充実。介護休業、介護勤務制度も整っており、いざというときも仕事と家庭を両立させやすい環境といえます。

2020年3月時点で女性管理職の割合が31.2%、女性役員が11.8%、マネージャー職が42.9%と、同社のこれまでの歴史が反映された実績が出ています。

【7位】花王グループ

ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、社員一人ひとりの活躍を目指す花王グループも、女性活躍推進の評価が高い国内企業のひとつ。子育て中の社員向けの短時間・時差勤務、残業や休日出勤の免除、在宅勤務など、フレキシブルに働ける制度が整っています。

また、育児休暇から復職する社員を対象に「育児休職復職前セミナー」の実施や企業内託児施設の設置、パパ・ママ社員による座談会、仕事と家庭の両立支援ガイドブックの提供など、独自の施策も数多く行っています。

2019年末の時点で、女性管理職比率は21.2%まで上昇。より多様で柔軟な働き方を推進するために、コアタイムなしのフレックスタイム制度や時間単位休暇制度なども進んでいます。

【6位】千葉銀行

2005年に「女性いきいきキャリアアップ宣言」を公表し、意欲的にダイバーシティ推進に取り組む千葉銀行。2011年には、女性職員の意欲向上と能力開発を支援する「女性活躍サポートチーム」を設置し、女性社員向けに個別面談を開始しました。また、女性向けの研修プログラムや女性部長が後輩女性を育成するメンタリングセッションも。

ワークライフバランス推進の一環としては、育児休暇制度のほか、不妊治療の通院中に利用できるチャイルドプラン休暇、妊娠中の体調不良や妊娠中の配偶者の通院の付き添い時等に利用できるマタニティサポート休暇も取得できます。子育て期間には、短時間勤務制度、時間外勤務免除・制限も利用可能と、幅広いサポートが提供されています。

同社の目標は、2026年7月1日までにリーダー職以上に占める女性比率を30%以上とすること。2021年7月現在は、25.5%に上昇しています。

【5位】資生堂

15年以上前から女性活躍推進に取り組み、高い成果をあげている資生堂。事業所内保育所の開設や保育料の補助、有給が認められる子どもの看護休暇制度など、手厚く子育てをサポートしています。2020年からは、新たな生活様式に合わせて「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を掲げ、在宅勤務と出勤を組み合わせたフレキシブルな働き方ができるように。

女性のスキルアップの場としては、2017年から女性リーダー育成塾を開始。幹部候補の女性社員向けに、マネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムを提供しています。

その結果、国内の資生堂グループの女性管理職比率は34.7%(2021年1月時点)、取締役会での女性比率は46.2%(2021年3月時点)に達しています。

【4位】アフラック生命保険

ダイバーシティ推進の第一歩として、女性活躍推進を力強く支援するアフラック生命保険。同社では、子育てや介護中の社員のみならず、全社員が、在宅勤務、フレックス勤務、8パターンのシフト勤務、モバイルワークなどを選択できます。その結果、所定外労働時間を16.4%削減、配偶者出産休暇の取得率100%、在宅勤務の社員利用率100%(2017年時点)を達成。「長く働き続けられる会社だと思う」と答えた社員も84%にのぼりました。

教育制度も充実しており、経営陣がメンターとなり女性管理職を教育する育成支援や全管理職に向けたダイバーシティマネジメント研修、上司による女性社員一人ひとりへの「育成計画」の作成など、本気で女性のキャリアアップに取り組む姿勢が見られます。

2020年1月時点で、ライン長(直属の部下を持つ管理職)の割合が20.7%、女性管理職が18.3%、女性執行役員が17.9%に向上したほか、女性社員の離職率が、20代:約4%、30代:約3%に激減。同社では、2025年末までに、ライン長ポストの女性割合を30%以上に引き上げることを目標にしています。

【3位】りそなホールディングス

2005年に提言された「りそなWomen’s Council」により、女性活躍・ダイバーシティ推進が大きく前進したりそなホールディングス。同年に、勤務時間または業務範囲を限定できる「スマート社員制度」を導入したことで、多様な働き方を実現しました。

さらに、仕事と育児を両立する従業員向けの復職支援プログラム、女性管理職に向けたメンタリング制度を充実させたほか、各所属長が「イクボス宣言」を行い、男性の配偶者出産休暇100%取得や男性育児休業取得の推進も進めています。

近年は、女性社員の4人に1人がワーキングマザーとして活躍しており、女性が管理職に昇進するハードルが低くなっている風潮も見られるとのこと。2020年4月には女性ライン管理職比率30.4%を達成し、引き続き、性別・年齢等にとらわれないダイバーシティを推進する方針です。

【2位】日本IBM

1960年代に四年制大学卒業の女性の積極的な採用を開始し、男女同一賃金を実現と、女性活躍推進のパイオニアともいえる日本IBM。世界のIBMが一丸となってダイバーシティ推進に取り組むなかで、1998年には、“Japan Women’s Council”の活動がスタートしました。

育児・介護と仕事の両立を支援する在宅勤務制度は、さかのぼること1999年に始まっており、その後も6割、8割の働き方が選択できる短時間勤務、コアタイムなしのフレックス短時間勤務制度と、ワークライフバランスを維持しやすい制度が充実。

キャリアビジョンを描くためのメンター制度、女性管理職の異業種ネットワークの発足、施設内保育所の開設、成果主義の徹底など、女性が活躍しやすい教育・人事制度も豊富です。さらには、2000年以降、新卒採用における女性比率を3割から4割までに引き上げたことで、営業職、技術職、研究職、コンサルタント職などに占める女性社員の割合は男性社員とほぼ同じに。2019年にスタートした女性管理職育成の年間プログラム「W50」も功を奏し、2020年12月時点の女性管理職の割合は18%に達しました。

【1位】アクセンチュア

2015年に開始した独自の働き方改革により、飛躍的に女性活躍推進の評価が上昇したアクセンチュア。フレックス制度、在宅勤務制度、短日短時間勤務制度のほか、休暇・手当制度もランキング上位の企業に劣らない充実ぶりです。

妊娠中の体調悪化時に利用できる母体保護休暇、子が1歳になるまで追加で休憩が取得できる育児休憩時間、子どもの看護休暇のほか、ベビーシッター補助、当日予約も可能なベビーシッター法人契約も。

2006年に社内で発足したJapan Women’s Initiativesにより、女性の採用を強化し、女性リーダーを継続的に輩出していく取り組みも行われています。その一環として、無意識のバイアスを排除するUnconscious Bias研修や管理職候補の女性社員が十分に成長機会を得ているかのモニタリングも実施しているそう。

結果的に、2021年6月時点で、女性管理職の割合が17.7%、女性社員の育児休業取得率100%、男性社員の育児休業取得率40.3%に。眼を見張るのは、男性社員の育児休業平均取得日数が102日である実績。日本全体では、男性の育児休業取得期間は7割が2週間未満(2018年時点)であり、アクセンチュア社の102日には遠く及びません。

上位企業の共通点は、「数値目標」と「充実した制度」

ご紹介したとおり、女性活躍・ダイバーシティ推進が高く評価されている企業の共通点は、現実的な数値目標を定め、企業全体として「女性活躍を推進している姿勢」を見せていること。そのうえで、自社にマッチした柔軟な働き方・人事・教育制度を取り入れ、社内で浸透させていく継続的な取り組みが求められるでしょう。

[文]小林 香織 [編集]サムライト編集部