ベテランデザイナーが教えるリアル『デザイナーという職業』

青山勤務のOLです

しってるひとはこんにちは、しらないひとは初めまして、381です。私こと381は都内でOLをしています。なので外で何か聞かれたら最初は「OLでーす。」と答えます。

実のところOLというものの業務内容は多岐に渡り、企画会議をしたり、てきとうに笑顔をふりまいたり、なにか書類を作成してかといって誰にも読まれなかったり、偉いひとのお世話をしたり、花瓶の水変えたり、部長の湯のみに一服盛ったりといったピンクなものから、絵を描いたり、アニメ作ったり、婚期を逃したり、夜中に「すげえ眠いマジ眠いいっそ殺せよ!」と会社の壁を殴ったり、「二時間後に納品な!」と投げつけられた映像素材を、編集したり合成したりといったブルーなものまで、実に多種多様な「したり」が展開されているのですが、

世の中と言うのは案外たやすいもので、「OLでーす。」のひとことで、「カタギなんだ。」となんとなく納得してくれます。

OLの襟がピンクからブルーまであることはあまり知られていません。

東京・青山の映像制作会社に籍を置き「デザイナー」をやっています、という、耳ざわりだけはえらくシャレた感じのアレで私は口を糊しています。学生時代のバイト先にそのまま就職したので、20年同じ会社で同じ仕事をしています。

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キャリア20年のベテランデザイナー

『キャリア20年のベテランデザイナー!』・・・何かに紹介されるときはそういう感じなのですが、シャレてるのは耳ざわりだけで、実際のところはデザイン土方でツルハシ替わりのマウス引きずりながら、表参道の植え込みでシャケ弁食ってる感じを思い浮かべていただければOKです。

私のメインの戦場は「グラフィックデザイン」や「CG」というジャンルで、主な発注内容は番組のOP映像だったり、ドラマのエンドロールだったり、
番組ロゴのデザインだったりDVDのパッケージデザインだったりします。

たまに、「たぶんアイツならイケんじゃね?」という、無責任きわまりない想像に基づいた発注、すなわち衣装デザイン及び実制作やジオラマデザイン及び実制作等々、立体造形の発注があったりします。

ここまででちょっと私の机周りを想像してみてください。

 

 

 

 

 

ハイ正解!

私の席は社内で「要塞みたいなとこ」と呼ばれています。

デザイナーという職業

青山勤務のデザイナーの机の通り名が「要塞」。そんなとこに腰掛けるOLの襟の色は、完全に群青色のカナシミブルー、月の労働時間が300時間を超えてきたあたりで、「洗っても洗っても落ちないのよお・・・!」という、シェイクスピアのマクベス夫人の台詞が頭をよぎり始めます。

デザイナーとはだいたいそんな感じです、他のデザイナーがどんな感じか全然知らないけど、多分みんな同じ感じだと思います、思いたいです。

世間が思うよりデザイナーという職業は、キラキラしたものではなく、むしろずっと泥臭いものなのです。ましてやよく言われる「クリエイティブ」なものではないのです。

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私はデザイン芸者

デザインとは、あるべきところにあるべきものを置く作業であり、芸術ではなくコミュニケーションの技術です。

しかもそのコミュニケーションは、自分のためのコミュニケーションではなく、雇い主が誰かとコンタクトするためのものです。

私は自分のことを「デザイン芸者」と呼び、企画会議を「お座敷」と称したりしています。それは、自分の持つ技術、手わざ口わざを余すことなく使いお客様を喜ばせておぜぜを得る「デザイン」という職業は、サービス業の最たるものだと思っているからです。

お客様というのはケタの違いはあれど、たいてい「予算は低く納期は早くクオリティは高く」を希望します。そこに真摯に向かい合い技術を余すことなく提供しようとすると、おのずと私の席は要塞のようになってしまうのです。

「片付けろ」と事務方のスタッフにガミガミ言われようと、これは私だけが悪いわけではないのです、安かろう良かろう早かろうを求め続けるお客様方のせいなのです。

いま私は番組のアートディレクションをしており、コンセプトを手始めに、ロゴ、タイトルCG、衣装、セット、等々デザインしました。

結果、日暮里に大量の布を買いに行き大鍋をグラグラ煮立てて布を放り込みロゴを染め抜き衣装を縫う、みたいな感じでいつにも増して「要塞みたいなとこ」みたくなっています。

布や棒や刷毛やヘルメットが積んであることで、年配の方々は「赤軍のアジトっぽいわー」と懐かしそうに目を細めています。彼らのノスタルジィに舌打ちしながら、私の唯一の理解者であるiMac Retina 5K に向かうのです。

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まあそんなこんなで、私こと381は都内でOLをしています。自己紹介はこんな感じで、次回は「デザイナーの才能について」書き散らかそうと思っています。

ベテランデザイナーが教えるリアル『デザイナーに必要な才能とは』

Career Supli
デザイン芸者という言い回しにプロ意識を感じます。次回が楽しみです!
[文]381 [編集] サムライト編集部