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キャリアをデザインするときに相談に乗ってくれる人
皆さんはキャリアコンサルタント(※)と聞いてどのような人を思い浮かべますか?
多くの人は、転職の際に相談するエージェントのことを思い浮かべるのではないでしょうか。キャリアというのは大切な概念でありながら普段はほとんど意識することがありません。
キャリアは、転換期(トランジション)に思い出したかのように意識し始めるものであり、転換期≒転職なのでエージェントが念頭にあるのだと思います。
しかし、転職だけがキャリアをデザインするタイミングかというとそうではありません。社内で異動することだってあるでしょうし、職種が変わることもあるでしょう。
プレイヤーからマネジャーに役割が変わる(昇進する)こともあるでしょうし、職場が変わることもあります。
さらにいえば、仕事上の目標を達成したい、パフォーマンスを高めたい、悩みを解決したい、というのも立派なキャリアデザインです。
こうしたキャリアに関する一連の悩みの相談に乗ってくれるのがキャリアコンサルタント(※)と呼ばれる人たちです。
(※)キャリアコンサルタントは2016年4月より国家資格になりました。国家資格に合格していない人は「キャリアコンサルタント」やそれに類する紛らわしい名称を名乗ることができません。
当コラムでは、キャリアについてコンサルティングを実施する人を広く扱い、名称を使用しています。参考はコチラ
実は多種多様なキャリアの相談の名称

皆さんも多かれ少なかれキャリアに関する悩みを抱えることはあるでしょうから、そういったときには誰かに相談することが有効です。(参考:転職のタイミングは誰に何をいつ相談するのが正解か)
しかし、キャリアに関する悩みを相談するという枠組みにおいて、世の中には「コーチング」「カウンセリング」「メンタリング」といった言葉が乱立していて相談者の混乱を助長しています。
そこで、この言葉の整理をすることでキャリアコンサルタントの有効活用につなげたいと思います。
●相談機能の分類
まずは図1を御覧ください。それぞれの機能によってコーチング、カウンセリング、メンタリングをプロットしています。
左右は時間軸、上下はコミュニケーションを手段として活用しているのか、あるいはコミュニケーションそのものが目的なのかによって四象限を作成しました。メンタリングはその機能によって「キャリア的」と「心理・社会的」に分けています(クラムによる定義)。
●カウンセリングに適した場面
カウンセリングとは、問題発見から問題解決までのプロセスを傾聴技法を中心に支援する機能です。
悩みの種別としては、なんだかモヤモヤしていて悩みなのかどうかも分からない、自分ではどうしたらいいかわからない、といったようなものが適しています。
ただし、カウンセリングは主に(カウンセラーから見て)傾聴技法中心で進みます。
これは何を意味しているかというと、カウンセラー側に答えはなく、答えはクライアント(相談者)が持っているのだから、カウンセラーは傾聴することによってあなたの答えを引き出しますよ、ということです。
ですので、「ズバリ答えがほしい!」という人には向いていません。カウンセリングのゴールは、クライアントが自立して意思決定ができるようになることであり、答えを与えて自立を妨げるようなことはしてくれません。
●コーチングに適した場面
コーチングとは、自己実現や目標達成を支援する機能です。
悩みの種別としては、今度の大会で優勝したい、仕事上でパフォーマンスを出したい、というように課題や目標がある程度明確になっており、それをクリアしたい場合に適しています。
コーチは、パフォーマンスのフィードバックと、次につなげるための目標設定支援を通じて向き合ってくれます。こちらのレベルに応じて「教える」と「引き出す」を使い分け、ときに厳しい言葉も含めて叱咤激励してくれます。
コーチングのゴールは設定した目標の達成ですが、達成すると次の目標を設定して継続してサポートしてくれることもあります。
●メンタリングに適した場面
メンタリングは悩みの種別や進め方によって「キャリア的」と「心理・社会的」に分かれます。
メンタリングはカウンセリングとコーチングの間のようなポジションで、大きな特徴としては、相談に乗ってくれる人(メンター)がトレーニングを受けた人でなくても構わないという点です。
カウンセラーとコーチは一般的にトレーニングを受けた専門家が担当します。ところがメンタリングの場合は隣の部署の先輩、というように、利害関係のない身近な人がメンターになってくれます。
心理・社会的機能を求める場合は、組織活性やコミュニケーションの実施そのものが目的となります。特段ゴールもありません。
キャリア機能はコーチングと若干似ていますが、先述の通り専門家ではなくロールモデルとなる人などが経験上のアドバイスをくれるというものです。
相談する側の自己認識も重要
一般的にキャリアの相談に乗る人(筆者もカウンセラーです)は、相談者の悩みが上記のどれに当てはまる(近しい)のかを対話を通じて探ります。
決めつけはよくありませんし、何より信頼関係(ラ・ポール)が構築されていないと何をやっても無駄骨の可能性もあるので、慎重に接することが求められています。
この慎重さが相談者に良い方向に影響することもあれば、もどかしさを与えてしまうこともあります。
ですので、もし皆さんが自分自身の悩みを把握していれば(把握できていなければそれはモヤモヤ状態なのでカウンセリングが適しているということですが)、それを認識した上でキャリアコンサルタントにも「こういうモードで接してほしい」と伝えてしまうのが良いと思います。
各相談機能について図2にまとめましたので参考にしてください。
プロスポーツ選手でもコーチをつけている
キャリア上の悩みを相談することが恥ずかしいと思うからもしれませんが、プロスポーツ選手でもコーチをつけていますし、優れたビジネスパーソンは大抵の場合メンター(ロールモデル)をつけています。
恥ずかしさよりも、キャリアをポジティブなものにするために使えるものは使う、というスタンスで有効活用してほしいと思います。
著者プロフィール:鈴木洋平(すずきようへい)
2002年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。システムエンジニアとして入社後、同社内で人事に転身。同社を退社後、「株式会社採用と育成研究社」を設立、同副代表。 企業の採用活動・社員育成の設計、プログラム作成、講師などを手掛けている。
・米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー
・LEGO® SERIOUS PLAY® 認定ファシリテーター
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