社会人としてキャリアを積むうちに、「このままでいいのかな」「より満足できる人生や働き方がしたい」と考えるのは自然なこと。そんなときに真剣に向き合いたいのが、自身の「キャリア形成」です。今回は、理想的なキャリア形成をするために知っておきたいポイントをご紹介します。
Contents
キャリア形成とは
キャリア形成とは、簡単に言うと「仕事をするなかで経験やスキルを重ねていくプロセス」のことです。ここで大切なのは、ただ流されるがままに仕事人生を歩むのではなく、目標や目的を掲げて主体的にキャリアを積んでいく姿勢です。
キャリアという言葉は、中世ラテン語の「車道」を起源とし、英語では競馬場のコースを示していました。それが人の足跡、経歴、遍歴といった意味を持つようになり、今では職業上の経歴などを指すものとして使われています。
参照:厚生労働省職業能力開発局「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書
終身雇用が当たり前だった時代は、キャリアを重ねる=会社でステップアップしていく、という認識が一般的でした。しかし、現代人に求められるのは、自らが設定したキャリアプランに沿って適切なスキルや経験を得ることです。そのためには「自分は何のために働くのか」「キャリアプランを実現するために、自分は今何をするべきなのか」などを常に考えながら日々の仕事に取り組む必要があります。
キャリア形成のメリット
これからの社会では、自分らしくキャリアを重ね、満足度の高い人生を歩むために、キャリア形成にしっかり向き合うことが大切だといわれています。キャリア形成には、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
やるべきことが明確になる
キャリア形成に取り組む際、まずは自分の将来についての具体的なプランを明確にします。プランがあれば、これからどんな行動を取るべきなのかを的確に判断できます。働くなかで、将来のための行動がわからなくなったとき、キャリア形成の内容を見直せば自分のすべきことがわかるでしょう。
また、転職・異動・独立・残留といった複数の進路がある場合や、キャリアアップに向けて勉強したいことが多岐にわたるなど、選択肢が多すぎて迷う場合にもキャリア形成で立てたプランが役立ちます。
キャリアプランを考えるためにはたくさんのリサーチや勉強、自問自答が必要です。そういった積み重ねによって自分の考えに筋が通り、最適な行動を選択できるようになります。
自分に自信がつく
キャリア形成への取り組みによって自分の目指す将来像を明確にすることが、やる気を出すためのスイッチになるケースも多々あります。会社から与えられたものなく、「自分は何がしたいのか」「仕事とどのように関わりたいのか」「どんなライフスタイルを希望するのか」などを踏まえてプランを立てるため、実現に向けて自発的に業務に取り組めるようになります。進む方向性がはっきりするので、自分の専門性を深めていくのか、リーダーシップを磨いていくのかといった、スキルの高め方を考えるヒントにもなるでしょう。行動の一つひとつに意義を感じられ、自信に繋がるのも大きなメリットです。
キャリア形成が重要な理由
なぜ今、キャリア形成が重要だとされているのでしょうか。その背景には、技術の発達や社会の変化が隠れています。ここでは、これからの社会を生きていくうえでキャリア形成が必要である3つの理由について解説します。
テクノロジーの発達
まず、大きな理由として挙げられるのが、AIをはじめとするテクノロジーの急速な発達です。「今ある仕事の多くは将来的にAIに取って代わられる」という話を耳にしたことがある方も多いでしょう。さらに、業務を効率化するITツールも日々進化し、人手が不要な状況になりつつあります。ツールの導入によって業務が自動化されたり業務時間が短縮されたりすると、その分だけ人件費が削られるわけです。
しかし、なかにはAIにはできない「ヒトならでは」の仕事も存在します。営業職やデータサイエンティストなどの職業は、今後もなくならないであろうといわれています。また、社会の変化に伴って、新しい職業や企業も誕生しています。例えばSNSのインフルエンサーなどは、一昔前にはありませんでした。今後も安定した収入を得るためには、世の中の状況を見据えてキャリア形成と向き合うことが必須です。
働き方の変化
政府が主導する働き方改革の推進にみられるように、現代はワークスタイルが多様化しています。共働き世帯が増加しただけではなく、企業に雇用されずに働くフリーランスが一般的になったり、副業解禁が進んだりするなど、以前では考えられなかった働き方の選択ができる社会が形成されつつあります。新型コロナウイルス感染拡大を受け、ワークスタイルに変化が生じた方も多いでしょう。
また、働く目的や仕事に対する価値観も人それぞれであり、自分らしい働き方を実現しやすくなりました。「仕事だけではなくプライベートも大切にしたい」「夢を叶えるために仕事中心の生活をしたい」「企業に所属せずに働きたい」といったように、自分がどんな希望を持っているのかを明確にしておかなければキャリア形成もうまくいきません。多様な働き方のなかから、自分なりの判断軸をもって選び取る力が必要です。
終身雇用の崩壊
以前は当たり前であった終身雇用制度ですが、現在は崩壊が加速しています。そもそも終身雇用は、経済の継続的な発展や好景気を前提に作られたシステムです。ITの発達によって社会は大きく変化し、産業の仕組みも以前とは異なるものへと変化しました。バブルの崩壊やリーマン・ショック、さらに新型コロナウイルスの感染拡大も追い討ちをかけ、名の通った大企業であっても終身雇用の維持が難しくなってきています。
今や、転職でステップアップを目指したり、キャリアチェンジを図ったりするのがスタンダードです。新卒で入社した会社に長く在籍していても、「この先もこのままだとは限らない」という意識を持ち、キャリア形成と向き合う姿勢が大切です。
キャリア形成の考え方
ここからは、キャリア形成に取り組むうえで役立つ考え方をご紹介します。ただ漠然と「自分はどんなキャリアを歩みたいのだろう」と考えるのではなく、型に沿って思考することで効率よくプランニングができるでしょう。ご紹介するなかから、自身に合う方法を探してみてください。
自己分析で考える
自己分析の有名な手法である〈WILL・CAN・MUST〉を使ったフレームワークをご存知でしょうか。自分のやりたいこと・できること・するべきことが整理されるので、はじめの一歩として気軽に取り組んでみると良いでしょう。
CAN:できること
MUST:やらなければならないこと
目標が「自分でビジネスを興す」なら、下記のように当てはめられます。
CAN:企業分野のリサーチ・人脈形成
MUST:今の会社で成果を上げる
頭で考えるのではなく、紙に書き出しながら考えてみることをおすすめします。
目標設定をして考える
「何をしたい」より「こうなりたい」を重視してキャリアを積んでいきたい方は、ロールモデルを探してみましょう。ロールモデルとは、自分が理想とする生き方を実践している人物や、お手本にしたいと思う憧れの人物です。
ロールモデルに設定するのは、会社の上司のような身近な人でも、起業家や作家などの著名人でも構いません。ロールモデルが見つかれば、次はどうすればその姿に近づけるのかを考えます。本人に話を聞いたり情報を集めて分析したりして、自分との違いや真似できそうな部分などをピックアップしましょう。
逆算で考える
「やりたいことと言われても、パッと出てこない…」そんな方は、逆算で考えるやり方を試してみてください。「やりたい」「なりたい」ではなく「やりたくない」「なりたくない」から、自分の理想を導き出す方法です。
- お客様と密に接するのが苦手→営業や販売ではなく、データ分析など、社内との関わりが濃い仕事を選ぶ
- 不規則な仕事に就きたくない→シフト制の職場を避ける
- 毎日同じ時間に出社したくない→自分の裁量でできるフリーランスを目指す
上記はあくまで一例ですが、ほかにも「電話対応をしたくない」「突発的な対応が少ない仕事がいい」「体力がない」など、様々な「やりたくない」「なりたくない」があるはずです。それらを一度、全部リストアップするのです。誰もが無意識に、苦手なことや嫌なことを避けて仕事選びをしているはず。一度自分のなかで整理して言語化することで、今後のキャリアを考える指針となります。消去法で残ったものが、キャリア形成で実現したいことだとわかってくるでしょう。
価値観で考える
働くうえで大切にしている自分なりのこだわりや価値観を明確にしてみるのもおすすめです。人によって価値観は様々であり、どれが正解というものではありません。まずは、何を大切にしたいのかをクリアにし、それに沿ったキャリアを形成することで、仕事だけではなく人生に対する満足度も向上します。
「金銭的な報酬より仕事のやりがいを重視したい」「しっかりとお金を稼ぎたい」「仕事とプライベートのバランスを保ちながら暮らしたい」「プライベートを重視し、それを叶えるために仕事も頑張りたい」など、自分の価値観を認識し、それができるキャリア形成を行いましょう。
キャリア形成をするための方法
ここからは、キャリア形成をするための具体的なアクションをご紹介します。前項で解説した方法でキャリアの方針を立てることで、自分が次にどんな行動を取るべきかが見えてくるはずです。あとはそれに沿ってひたすら行動し、定期的に振り返りと軌道修正をしてください。
本やWebで独学する
真剣にキャリア形成と向き合いたい方におすすめしたいのが、読書を習慣づけることです。定期的に本を読む時間を持てば、密度の濃い情報をハイスピードで吸収できます。ビジネス書なら1冊2,000円以内、新書であれば1,000円以内で入手できるものがほとんどです。電子書籍を活用すれば、通勤時間や休憩時間などのちょっとした隙間時間にも読書を楽しめます。
また、信頼のおけるWebサイトや、プロが監修したWeb記事などを参考にして、今の仕事に活かせる分野や将来的に取り組みたい分野の知識を深めるのもおすすめです。本やWebは、低予算でキャリア形成の基礎を固めることができるため、手軽な自己啓発の一環としてルーティン化しましょう。
資格を取得する
英語力を測る「TOEIC」や、お金に関する知識を幅広く身につけられる「ファイナンシャル・プランナー」、不動産の売買・賃貸に必要な知識を習得する「宅地建物取引士」など、ビジネスパーソンにとって魅力的な資格や検定が数多くあります。取得にチャレンジする際は、ただ「有名だから」「聞こえがいいから」という理由ではなく、自分のキャリアプランと照らし合わせて本当にそれが必要かどうかを判断しましょう。
在籍している会社が「キャリア形成促進助成金」などを利用している場合、資格取得のサポートを受けられる可能性があります。また、派遣社員として勤務している方は、派遣元会社のキャリア形成支援制度を利用すれば、無料でスキルアップの訓練が受けられます。自社で展開している支援制度を確認し、キャリア形成に役立てられそうなものがあれば、ぜひ活用してみてください。
オンラインスクールで学ぶ
今やオンラインでもセミナー・講座が数多く開講され、通勤時間や休日に手軽に学べる環境があります。なかには無料で参加できるものもあるので、深めてみたい分野の講座があれば、入門として受講するのもおすすめです。オンラインで無料でも内容が充実したものが多く、隙間時間でレベルの高い知識やスキルを身につけることも可能です。
転職エージェントに相談する
厚生労働省から委託を受けたキャリア形成サポートセンターや転職エージェントを利用して、プロに相談をしてみるのもおすすめです。「転職するべきかどうか」「自分の市場価値が知りたい」など、周囲には打ち明けにくいことでも気軽に話せるのが魅力です。
プロの目線からの俯瞰的なアドバイスを受けることで、今まで見えていなかった自分の可能性がわかったり、思いもよらなかった本心に気づいたりできるでしょう。
まとめ
男性や女性を問わず自分らしく生きていくためには、自らの価値観や目標、理想のライフスタイルなどと真摯に向き合い、キャリア形成を計ることが大切です。ご紹介した方法を実践し、満足のいくキャリア・人生を実現してください。行動して結果を検証し、次の行動に活かしたり軌道修正をしたりすることで、どんどんとキャリアがブラッシュアップされていくでしょう。
[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部