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カンボジアの人口は1500万人
みなさん、突然ですがカンボジアで流行っている日本食は何か想像つきますか?
ラーメン?たこ焼き?寿司?
実はそのどれでもありません。
それは「焼肉」です。
なぜ「焼肉」がカンボジアで流行るのか。その答えは当記事を読み進めていただくと明らかになるでしょう。
現在、カンボジアにはビジネスチャンスを求める企業が進出したり野心ある起業家が移住するケースが増えています。
在留邦人は3000人。カンボジアの人口が1500万人であることを鑑みると決して少なくない数です。
今回は「海外就職研究家」の森山たつを氏にカンボジア現地のビジネス事情を伺いました。森山氏は「海外就職研究家」としての活動のほかに、海外現地での就業体験を通してキャリアアップを図る研修プログラムを学生・社会人に提供する企業を経営されています。

森山たつを スパイスアップ・アカデミア代表取締役 早稲田大学理工学部卒業後、日本オラクル、日産自動車などに15年勤務の後、日本人の海外就職に関する調査・研究を行う「海外就職研究家」として独立。2014年に、海外で働く体験ができる実践型インターンシッププログラム「サムライカレープロジェクト」をスタートする。現在、プログラムの運営に携わる傍ら、大学・企業などでの講師や朝日新聞Globe,J-Cast会社ウォッチ,Yahooニュースなどの連載を手がけている。主な著書に「セカ就!」(朝日出版社)「普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド」(東洋経済新報社)など。
カンボジアで成功してるビジネスとは?

−カンボジアではどのようなビジネスが上手くいっていますか?
森山氏:カンボジアの安い労働力を活用したアウトソーシングサービスを提供している会社がうまくいっているようです。
たとえば、ITスキルのあるカンボジア人による動画制作、画像加工、プログラミングのアウトソーシングサービスを日本企業に提供している会社など。
カンボジアは人件費が本当に安いんです。ケンタッキーフライドチキンで働いているカンボジア人は時給0.5ドル(約54円)で働いていますよ。IT技術者でも月給200~300ドル(2万2000円~3万3000円)ほどなんですよね。
カンボジア人相手の商売は難しい?
−カンボジア国外にクライアントがいるIT系アウトソーシングサービスがビジネスとして上手くいっているんですね。それでは、カンボジア人相手の商売は難しいのでしょうか?
森山氏:そうですね。カンボジア人相手に商売をするのは結構厳しいですね。ショッピングモールでは2.5ドル(約280円)で凄く美味しいカツ丼が食べれます。
それだけ物価が安いんです。カンボジア人相手の商売で大きな利益を得るのは容易ではないですね。
イオンモールが大繁盛、デートスポットになってる

−カンボジア人相手の商売は簡単ではなさそうですね。でも、その中でも成功している日本企業はあるんでしょうか?
森山氏:カンボジアの内需を取り込むのは簡単ではないですが、上手くいっている日本企業もあります。その代表格がイオンモールですね。
カンボジアの既存のショッピングモールはもっさりしてて店員も半分寝ているような場所でした。
そんなところにイオンモールが登場。4年ほど前ですが、最初は結構浮いてましたね。カンボジア人は「こんなところに入っていいのか?」ととまどってモールに入らなかったんですよね。
でも、一年もすると彼らも慣れてきてデートスポットとしてイオンモールを使うようになりました。
ラーメン、カレー、たこ焼「ジャパン」な日本料理はあまりウケない

−イオンモールに日本料理の店は入っているのでしょうか?上手くいっていますか?
森山氏:ラーメン、たこ焼、カレーなどの「ジャパン」な日本料理はウケないようです。イオンモールオープン後にモール内にもそれらの料理屋が開店したのですが、今では全部閉店しています。
でも日本料理の中で唯一と言っていいくらいカンボジア人にウケがいいのは焼肉食べ放題、しゃぶしゃぶ食べ放題の店ですね。
価格は10ドル~20ドル(約1100円~2200円)で食べ放題です。あと、街中では牛角やモーモーパラダイスが繁盛していますね。
成功する秘訣は現地のニーズをしっかりに捉えること

−なぜ焼肉、しゃぶしゃぶが上手くいっているのでしょうか?
森山氏:カンボジア料理には肉を煮たり焼いたりする料理が多いんです。焼肉はカンボジア人にとってそもそもの親和性が高いんですね。
それとカンボジア人の味覚に合わせたタレを使っているもの特徴です。カンボジア人は甘いものが好きなので、すごく甘いタレやチリソースを使っていますね。
丸亀うどんは「コシのない」うどんでカンボジア市場を開拓
森山氏:先ほど「ジャパン」な日本料理はウケないと言いましたが、例外もあります。実はカンボジアでは丸亀うどんが繁盛し始めています。
丸亀うどんが凄いのは日本人好みのコシがあるうどんを潔く捨てた点でしょう。やわらかいコシのないうどんの方がカンボジア人に好かれるからです。
−その丸亀の成功例、自社のこだわりを押し付けることなく、顧客のニーズを把握して売ることの大切さを物語っていますね。
海外で活躍する人材に求められる資質とは?

−日本企業の海外展開において現地の日本人責任者の活躍があると思いますが、海外で活躍する人材にはどのような資質が求められているのでしょうか?
森山氏:自分たちが良いと思っている商品を押し付けるのではなくて、お客さんのニーズを把握し、そのニーズに沿った商品を提案できる。このすり合わせができる人は海外において活躍できるでしょう。
一言でいえばマーケティングセンスに秀でている人は重宝されそうです。
海外で働くことには商売全体を丸ごと動かせる面白さがある
−海外で働くことにはどのような面白さ、意義がありそうでしょうか。
森山氏:日本企業の海外支社で働く場合、そもそも日本人の数が少ないので裁量の大きい仕事を一人でどんどん回していくことになります。商売全体を動かしていく経験が積めるのです。
さらに、異文化下で外国人と協力して働く経験も積めますね。これらは日本において、なかなか積めない経験です。希少価値の高いスキルとなるでしょう。やりがいもありますし。
ちょっと面白い例を出しましょう。
2008年、カレーのCoCo壱番屋がタイに進出しました。当初、日本のカレーというのはタイ人には認知されていませんでした。
しかし、良い立地に出店し店舗の内容もお洒落にし、高級な食べ物であることを印象付ける啓蒙を続けました。
カレーの価格設定は日本と同様の価格帯か少し高いくらいにして。タイ人にとっては高級な部類の飲食店です。
結果、CoCo壱番屋はタイ人から高級な店として認知されるようになりデートスポットとして利用されるようになりました。海外で働くのは、こういった新たな市場を開拓するやりがいもあります。
海外で働く前にはお試し期間を設けると良い

−ただ、海外で働くのってハードルが高そうですよね。
森山氏:そうですね。海外で働けたとしても、安易に海外で働くと決めるのはリスキーでもあります。確実に適性がありますからね。
私は「海外就職研究家」としてたくさんの人の海外就職の相談に乗ってきました。
その中で、「海外で働きたい」と意気込み、いざ海外で働くことになったものの「海外の生活、労働環境が合わなかった」と後悔してる人も見てきました。
それは本人にとって非常に不幸です。海外で働く前に自分の向き不向きを知れる機会があれば良いと思い、2014年に海外就職の前にお試しで就業体験を積める研修プログラムを開発しました。
それが「サムライカレー」です。

「サムライカレー」はカンボジアで日本のカレーを売る2~4週間の研修プログラムです。当初は日本のカレーなら海外でも売れるだろうと思って始めたのですが、カンボジアで日本のカレーはあまり人気がありませんでした。
そこで研修プログラム参加者は、肉巻き寿司やカレーパン、カンボジア現地のクメールカレーを改良したカレーなどカンボジア人に売れる商品を企画・開発してカンボジア人に向けて販売します。海外で働くとはどのようなものか肌で知ることができます。
参加して海外で働くのが向いているとわかり、海外で働くことを決めた人や、海外の環境で働くのは向いていないけど、外国人と一緒に働くのは楽しいと分かったので帰国後に外資系に転職した人など、みなさん今後のキャリアを考える機会として利用されていますね。
学生にも海外で力をつける機会を提供

−サムライカレーは就活を控えてる学生にとっても良さそうですね。
森山氏:そうですね。元々は社会人に向けた研修プログラムだったのですが、最近では学生からの申し込むがすごく増えています。
サムライカレーは自分の頭で考えて行動することが求められますので、そこで頑張った経験が就活にも活きているのではないでしょうか。こんなサムライカレーの体験談が面接官にとって好評なようです。
「最初は日本の寿司を売ろうとしたけど売れなかった。そこでカンボジア人にヒアリングを実行。
すると彼らは寿司をそもそもあまり知らないし、酢飯が臭いと感じていたことが判明。そこで「肉巻き寿司」に変更してカンボジア人に販売したことろ爆売れした。」
明らかにその人の課題解決能力を示す体験談ですよね。面接官からの評判も上々な様です。
−カンボジアのビジネス事情は本当に面白いですね。そんな場所で働く体験を積むのは社会人、学生問わずキャリア形成にとってすごく有意義に思えます。本日はありがとうございました。

ライター兼英日翻訳家のパブロです。 基本、中南米在住で用事があれば日本や米国にも行きます。 サルサダンスが三度の飯より好物。 [編集] サムライト編集部