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転職先選びとビジネスモデル
「この会社なら自分のやりたいことができる!」と希望に満ち溢れて転職したら、あれよあれよと言う間に業績が落ち込み、気づけば人手不足で「やりたいこと」どころではなくなっていた……。せっかくの転職がこんな悪夢に変わらないためにも、転職先選びは重要です。
しかしベンチャー企業の場合はそれまでの実績や社外に公表されている情報が少ない分、将来性の見極めが難しくなってしまいます。そこで持っておきたいのが「ビジネスモデルから企業を見る視点」。
事業の基礎となるビジネスモデルを理解できれば、現在の業績に惑わされずにその企業の将来性を見極められます。ここではビジネスモデルの基本と、儲かるビジネスモデル・儲からないビジネスモデルの見分け方について解説します。
9つの基本ビジネスモデル
ビジネスモデルは個々の企業によって異なるものの、実はそこには共通項があり、それを理解しておくだけでも企業の将来性はぐっと見極めやすくなります。その共通項となるのが以下の9つのビジネスモデルです。
●物販モデル
「モノを作り、それを売る」というシンプルなビジネスモデル。多くのメーカーが当てはまります。
●小売モデル
「仕入れて売る」ビジネスモデル。コンビニや衣料品店などの小売業のほか、卸売業が当てはまります。
●広告モデル
広告を掲載する対価として、広告料を得るビジネスモデル。雑誌やテレビ、フリーペーパーなどが当てはまります。
●消耗品モデル
低価格で商品を販売し、それを利用するために必要な消耗品の販売やメンテナンス料で収益をあげるモデル。プリンターや複合機などを取り扱うビジネスに当てはまります。
●継続課金モデル
製品・サービスの定期的な利用により収益を上げていくモデル。携帯電話事業や会員制事業などが当てはまります。
●二次利用モデル
1つの商品を何度も利用することで収益をあげるビジネスモデル。アニメや映画のDVD、ミュージシャンのベストアルバムなどもこのビジネスモデルに当てはまります。
●合計モデル
お得感のある目玉商品を用意しておき、それに付随する商品も「ついでに」買ってもらうことで収益をあげるビジネスモデル。格安の旅行パックなどが当てはまります。
●マッチングモデル
製品・サービスの提供者と消費者をマッチングすることで利益を上げるビジネスモデル。求人サイトやホテル予約サイト、クラウドソーシングサイトなどが当てはまります。
●フリーミアムモデル
無料の「ベーシック版」を多くの人に配布し、ユーザーに有料プレミアム版にバージョンアップしてもらうことで収益を上げるビジネスモデル。Dropboxや課金ゲームなどが当てはまります。
儲かるビジネスモデル・儲からないビジネスモデルの見極め方
転職候補先が9つの基本ビジネスモデルのうちどれに当てはまるのかを見極めたら、次はそのビジネスモデルの収益構造に目を向けましょう。例えば次のようなビジネスモデルを採用している企業は高収益企業になりやすい傾向にあります。

このほか、原価や販管費の伸びよりも、単価の方が高いビジネスも高収益企業になる傾向にあります。
一方で売上アップと同時に原価や販管費も膨らむようなビジネスモデルは、いくら売っても利益が出ないため高収益企業にはなれません。また短期的には高収益が得られるビジネスモデルでも、社会の変化に伴って収益構造が崩れるような場合は注意が必要です。
ビジネスモデルで考えるとこんなメリットも!
ビジネスモデルを通じて企業やビジネスを見るようになると、自分自身が新しいビジネスモデルを作ることもできます。
男性用カミソリ・髭剃りメーカーとして有名なジレット社が確立したとされる「ジレットモデル」を例に挙げてみましょう。ジレットモデルは現在のカミソリ業界では常識となった「使い捨て替え刃」によって収益を上げる消耗品モデルです。このモデルでは最初にカミソリ本体を購入すると、その後ユーザーはその本体に対応する替え刃しか買わないようになります。
他のメーカーをカミソリ本体を買えば、他の替え刃を使うこともできますが、コストを考えればそんなことをする人はいません。これによりジレット社は固定ユーザーを獲得し、継続的な売上と収益を上げられる仕組みを作ったのです。
これを横目で見て、別の商材でビジネスモデルを確立したのがゼロックス社です。同社は高価な複写機をリースやレンタルすることで、顧客の導入コストを抑え、その後のコピーの枚数に応じた課金システムを確立しています。このように「あの会社はどんなビジネスモデルで儲けているのだろう」と観察していると、それをうまく転用して別の領域で儲ける構造を作ることができるのです。
この方法を転職先の企業の役に立てるもよし、自分で起業してしまうもよし。どちらにせよ、ビジネスモデルで考えると大きなメリットがあることは変わりません。
メタな視点で転職候補企業を見よう
現在の業績や話題性などで転職候補先を選んでしまうと、冒頭で見たような最悪の事態になりかねません。ビジネスモデルの視点から考えると、同じ業績アップでも一過性のものなのか、ビジネスの構造上当然の結果なのかを見極められます。
個々の企業のビジネスモデルだけでなく、同業の大企業などのビジネスモデルと比べればどんな点に優劣があるのかもより理解しやすくなるはずです。メタな視点で転職候補企業を見ることで、確実に転職を成功させましょう。
