プロのライターが教える、文章力が上がるたった3つのポイント

「美文」の真似をしても、文章力は上がらない

基礎ができていないまま応用レベルを真似しようとすると、何事も失敗に終わります。文章に書くことに慣れていない人がプロの作家の美文を真似するのは、バスケットボールの初心者がNBA選手の真似をしようとするのと同じくらい無謀なのです。

しかし忙しいビジネスマンには一から文章の基本を学ぶ時間がありません。そこでここではライター歴4年の筆者が、これまで見てきた「作文慣れしていない人の文章にありがちな失敗」をもとに、文章力を上げるためのポイントをたった3つに絞って解説します。

難しいことを考えず、まずはこの3つから始めてみてください。

「主語」と「述語」に徹底的にこだわるべし

作文に慣れていない人がやりがちな失敗の筆頭が「主語と述語の関係が複雑になっている」です。読みやすい文章やわかりやすい文章とは、読み終わるまでに「どういう意味だ?」「どうしてこうなるんだ?」などの「?」をできるだけなくした文章を指します。

しかし主語と述語の関係が複雑になっていると「誰が」「何を」「どうしたのか」という文章の基本部分がわかりづらいため、読み手の頭の中は「?」でいっぱいになってしまいます。したがってまずは主語と述語の関係=「主述関係」に徹底的にこだわる必要があるのです。

以下では主述関係が複雑になってしまっている文章を見ながら、どう改善するべきかを考えてみましょう。

<悪い例>
私はX君が○○商事の件についてはY君が把握していると考えていたので口を出すことではないと思ったと言ったことに関して、それはX君の責任転嫁だろうと考えています。

この文章の中の主述関係は以下のように整理できます。

問題点は全部で3つ。1つ目は「私は」と「考えています」が遠すぎること、2つ目は一文の中に主語がたくさん入りすぎていること、3つ目はこれだけ主述関係が入り組んでいるにもかかわらず「主語の省略」がされていることです。

これらを踏まえて文章を改善すると、例えば次のような書き方ができます。

<改善例>
X君の「○○商事の件についてはY君が把握していると考えていたので、自分が口を出すことではないと思った」という発言に関して、それはX君の責任転嫁だろうと私は考えています。

長い文章でやりがちな失敗が、「頭の中で思いついた内容をそのまま書く」です。このやり方で書かれた文章は得てして「(自分が読めばわかるんだし)他人が読んでもわかるでしょ」という内容になりがちです。

しかしそれは残念ながら思い込みです。一度書いてみて「少し長くなったな」と思った文章に関しては、改めて主述関係がややこしくなっていないかチェックしましょう。

またもし可能ならば短い文章に区切って、主述関係が入り組まないように書き直すのも効果的です。

結論は「はじめに」「一文だけで」表すべし

2つ目のポイントは、結論を「はじめに」「一文だけで」書くことです。読み手は基本的に「前置きはともかく、何が言いたいかを知りたい」と考えています。

これはスピード重視のビジネスシーンの文章やブログやSNSといったウェブの文章を書くときに常に頭に入れておくべき鉄則です。読み手のこの欲求に応えるには、結論を「はじめに」「一文だけで」表すのが最も効果的です。

例えば取引先から次のようなメールが送られてきたとしましょう。

<悪い例>
お世話になっております。

○月○日納品予定の製品Xについてお問い合わせいただいた件でご連絡いたします。
調査いたしましたところ、以下の問題が発生しておりました。

・受注担当者が出荷システムへ誤入力。
・チェック担当者が誤入力に気づかず発注を手配。
・他のお客様に製品Xを納品。

ただいま誤納品したお客様から製品Xを回収させていただき、貴社への配送を手配しております。
納品は○月△日となります。

このたびは多大なるご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。
もうしばらくお待ちいただければ幸いです。

一見すると箇条書きも活用しながら、わかりやすくまとめた謝罪メールに思えます。しかし読み手の「前置きはともかく、何が言いたいかを知りたい」という欲求には応えられていません。

読み手が知りたいのは「届いていない製品Xがいつ届くのか」です。この点を踏まえて改善すると、以下のような書き方ができます。

<改善例>
お世話になっております。

○月○日納品予定の製品Xについてお問い合わせいただいた件でご連絡いたします。
このたびは納品が遅れまして申し訳ございません。
ただいま全力で手配しており、貴社へは○月△日に納品予定となっております。

このたびは多大なるご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございませんでした。
もうしばらくお待ちいただければ幸いです。

謝罪の意思を示したうえで、すぐに「届いていない製品Xがいつ届くのか」の内容に入っています。悪い例にあった誤納品の原因についての文章はビジネスマナー的にも「聞かれてから答える」で十分なので、ここでは省略しています。

前置きからじっくり書いてしまう人の頭の中にあるのは「こちらが一生懸命書いているんだから、根気よく読んでくれるだろう」という希望的観測と、「結論を理解してもらうには、前置きの内容もきっちり理解しておいてほしい」という自己満足です。

こうした心境から抜け出すためにも、まず「前置きはともかく、何が言いたいかを知りたい」という読み手の欲求に応えようという意識を持ちましょう。

また結論を「一文だけで」書くことにはもう一つメリットがあります。それは一文だけで言い表そうとすると、言いたいことが洗練されるという点です。ダラダラと何文にもわたって書くよりも、ストレートな文章になるので、読み手にも伝わりやすくなります。

「〜ということ」に逃げるべからず

「〜ということ」という文言がやたらと入っている文章は「雰囲気は出るけど何が言いたいかわかりにくい文章」になります。なぜなら何も考えずに「〜ということ」を使うと、この文言の「こと」が何を指すかがあいまいになってしまい、その結果文章全体がぼんやりとしてしまうからです。

「〜ということ」と書いたあとに、「この『こと』は何を指す?」と自問してみましょう。意図的に使った場合は別として、なんとなしに使った場合はおそらく答えられないはずです。

それは「他に表現のしようがないから、雰囲気も出るし、なんとなく『〜ということ』としておこう」と無意識のうちに考えているからです。

例えば以下のような文章があったとしましょう。

<悪い例>
経営するということにあっては、誠実であるということ、勤勉であるということ、そして公明正大であるということが第一である。

「〜ということ」が乱発されていて、読み手はいちいち「この『こと』は何を指しているのか」と考えなければなりません。いかにも立派な経営者が書きそうな文章ですが、改善の余地はあります。

<改善例>
経営においては誠実さと勤勉さ、そして公明正大さが第一である。

本来「〜ということ」には「〜」の部分を名詞にする役割があります。そのため「〜」の部分が名詞にできるのなら不要なのです。先ほどの悪い例で使われている「〜ということ」の「〜」は全て名詞にできるので、全ての「〜ということ」を削除して文章全体をシンプルにしました。

このように「なんとなく立派そうに見えるから」などの逃げの理由で「〜ということ」を使わなくなると、無駄な文字が減り、言いたい内容を凝縮できます。

読み手からしても「この『こと』は何を指しているのか」と考える手間が省け、少ないストレスで文章を読めます。結果読みやすい文章、伝わる文章になるのです。

伝わる文章=読者に優しい文章

プロのレベルで「文章が上手い人」の文章は、リズム・語感・言葉選びなど細部に至るまで計算され尽くしています。このような技術を持っているのは、プロとして文章を書いている人のごく一部だけ。

誇るような話ではありませんが、筆者にもそんな技術はありません。しかし言ってしまえば「伝わる」が目的の文章で、そこまでの技術は求められていません。上手でなくても伝わればいいのです。

しかしここで挙げた3つのポイントを満たせないままでは、どうしても読みにくい文章、伝わりにくい文章になってしまいます。

まずはずは自分の中の「わかるでしょ」「ちゃんと読んでよ」を排除して、読者の「?」を減らしていく作業に意識を傾けてみましょう。

Career Supli
即効性のある方法なので、ぜひ試してみてください。