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アジア就職は難しくない!
皆さんは転職を考える時、転職先にどの国の企業を候補に入れていますか。それがもし日本国内だけだというなら、それはかなりもったいない考え方です。
というのも、日本企業の海外進出が広がっている今となっては、アジア転職へのハードルがかなり下がってきているからです。ここでは海外キャリアコンサルタントの岡本琢磨さんの著書『キャリア・シフト 人生戦略としてのアジア就職』をもとに、アジア就職のメリットについて紹介します。
アジア転職で得られる10のメリット

1. 今までの人生を「リセット」して新しい人生をスタートできる
2. 仕事でも通用する本物の「語学力」を身に付けることができる
3. 経験に裏打ちされた本物の「コミュニケーション能力」がつく
4. 異なった文化や宗教、言語を持つ国の人と「友達」になれる
5. さまざまな考え方を持つ外国人と仕事をすることで人として「成長」できる
6. ワンランク上の「やりがい」ある仕事を任せてもらえるチャンスをもらえる
7. 海外での経験が評価され「グローバル人材」として国内外での雇用機会が増える
8. 伸びゆく市場で「起業」するチャンスを見つけることができる
9. 世界中どこでも生きていけるという「自信」を持つことができる
10. 自分らしい「オリジナリティ」豊かな人生を歩むことができる
(前掲書p23〜29より再構成)
岡本さんはフィリピンのセブ島で英語学校「CROSS×ROAD(クロスロード)」を運営し、これまで600名超の日本人の若者のキャリア相談に携わってきました。そんな岡本さんが考えるアジア転職で得られるメリットがこの10項目です。以下ではこの10項目を「スキルアップ」「人脈」「経験」「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」の4つの切り口から見ていきましょう。
●グローバルで通用するスキルが身につく
10のメリットのうち2と3はスキルに関するメリットです。日本人の多くはかなりの年数の英語教育を受けていますが、残念ながら日本国内で英語を話す機会がほとんどないため、必然的に仕事で通用するような英語力は身につきません。一方でアジア各国で働くとなれば入社したその日から英語が必要になるため、急速に英語力がアップしていきます。
実はシンガポール以外のASEAN諸国で働く場合は、卓越した英語力が必要なわけではありません。岡本さんが複数の人材紹介会社にヒアリングした結果によれば、TOEICの点数が550〜660点前後でインドネシアやタイ、ベトナムの職場で通用するとされています。英語が公用語のフィリピンに至っては、同じ点数の人でも日常生活もできるようです。
TOEICの点数はあくまで目安に過ぎません。日本企業のインドネシア支社で働く筆者の友人には「TOEICができても海外では全くしゃべれない」という人もいます。とはいえある程度の基礎力があれば、就職してから実地で学んでいくことも可能です。
また英語力がない人でも短期留学などでみっちり勉強すれば、内定をもらえるレベルの英語力は身につけられると、岡本さんは言います。ただしその場合は別途1ヶ月あたり20万円〜30万円の費用が必要です(フィリピン格安留学の場合)。
英語力よりも必要になるのが、文化や歴史、考え方の違いを理解したうえでのコミュニケーション能力です。日本国内でも地域による違いがあるくらいですから、海外に行けばその違いはもっと大きくなります。アジア転職を経験すれば、そうしたグローバルな適応能力も身につきます。
●多種多様な人脈が手に入る
10のメリットのうち4と5が人脈に関するメリットです。文化や歴史、考え方の違いを理解したうえでのコミュニケーション能力を身につければ、自ずと様々な価値観や人生観を持つ人と友人になることもあるでしょう。そうした人たちとの友人関係は、日本国内では得難いものです。場合によってはビジネスにもつながるでしょうし、自分自身の価値観や人生観の成長の糧にもなるはずです。
単なる友人関係だけでなくビジネス関係を結んだ場合、価値観や人生観の違いはよりシビアな問題になります。今までのやり方や考え方が全く通用しないケースもあるでしょう。国によっては時間や仕事の質に極端にルーズな人が、日本では信じられないほど多いことだってあります。そうした環境で結果を出せるかどうかは、自ずと個人の成長にもかかわってきます。
逆に言えば日本や自分のやり方に執着してしまうタイプの人は、アジア就職にはあまり向いていません。職場の中だけでなく日常生活でも他国の文化にさらされるため、無理をせずに国内で就職活動をする方が無難でしょう。
●キャリアアップにつながる経験ができる
10のメリットのうち6〜8がキャリアアップに関するメリットです。アジアに進出している日系企業には、マネジメント人材を求めている企業も少なくありません。そのため比較的早い段階で規模の大きなやりがいのある仕事を経験できる可能性があります。
言葉や文化の壁があるために日本国内でマネジメント業務に就くよりも大変かもしれませんが、そのぶん確かな経験になるでしょう。そうした経験は「グローバル人材」としての経歴になります。この経歴は「最初に就職した現地企業で働き続ける」「別の現地企業に転職する」「帰国して国内企業に転職する」どの選択肢を選んでも必ず大きな武器になります。
さらには何年かかけて積んだ経験を糧に海外で起業するという選択肢すらあり得ます。全体的に経済が縮小を続ける日本とは違い、アジア諸国は今後も伸び続けると考えられています。岡本さんが引用しているGlobal Insightの「世界のGDP構成比予想(地域別)」によれば2050年のアジア地域の構成比は48.1%(2010年は27.9%)となっているのに対し、日本の構成比は1.9%(2010年は5.8%)です。
世界的な会計事務所PwCも「2050年の世界 BRICsを超えて:その展望・課題・機会」の中で、ベトナムやインドネシア、マレーシアなどアジア諸国の成長を予想しています。このような環境であれば、日本で起業するよりもさらにハードルは下がるといえるでしょう。
一方で目先の給料や待遇を求めたり、何の人生プランもなしに飛び出してしまうのはハイリスクです。アジア就職をした場合の平均的な初任給は日本円で20万円程度。専門的なスキルがあればさらなる待遇も期待できますが、給料や待遇が下がるケースは少なくありません。
そこに言葉や文化の違いによるストレスが重なれば、人生プランのない人はすぐに挫折してしまいます。これは日本国内での転職でもいえることですが、海外転職の場合は諸々のコストを考えて、より慎重になるべきでしょう。
●人生の選択肢が一気に広がる
10のメリットのうち1と9、10がQOLに関するメリットです。時間の使い方、住む場所、付き合う人間、この全てをアジア転職は一気に変えられます。これまで日本国内で「自分を変えられない」と嘆いていた人でも、かなりの確率で大きく人生を変えられます。
実際に変えてしまえば、それは大きな自信に変わります。岡本さんのインタビューを受けた女性は、アジア転職をするまで長野県の企業で事務をしていました。しかしアジア転職から6ヶ月後には岡本さんの「3年後には何をしていると思いますか?」という質問に、「今の会社にはおらずアジアを転々としているか、フィリピンで起業しているかもしれない」という旨の回答をしたのです。
こうした大きな人生の変化は、誰にでも起きる可能性があります。そのようにしてアグレッシブに行動する人生を歩めば「これは自分だけの人生だ!」というオリジナリティも感じられるようになるでしょう。人生の選択肢は広がっていく一方です。
10項目のメリットは、アジア転職をしなければ得られないというものではありません。しかし少なくとも、アジア転職という選択をすれば得られるメリットです。これだけでも転職先候補にアジアを入れる理由には、十分ではないでしょうか。
「日本以外」も視野に入れよう
今の日本の経済状況や労働環境に閉塞感を抱いている人にとって、日本以外特にアジア圏への転職は非常に建設的な選択肢です。もしアジア転職についてもっと知りたいと思うのであれば、ぜひ『キャリア・シフト 人生戦略としてのアジア就職』を手にとってみてください。
この本にはどうやってアジアへの就職活動を行うのか、どんな基準で企業や国、就業形態を選ぶべきなのか、どんなリスクを考慮するべきなのかといった内容が具体的に解説されています。新しい経験、新しい人生の頼もしいガイドブックにきっとなってくれることでしょう。
参考文献『キャリア・シフト 人生戦略としてのアジア就職』
