「転職する勇気がない…」はもう卒業!『幸せになる勇気』から成功する転職を学ぶ

あなたに「幸せになる勇気」はあるか?

2013年12月に出版され、一大アドラーブームを生み出した『嫌われる勇気』。その続編が先日出版された『幸せになる勇気』です。今回も前作に登場した「青年」と「哲人」の対話篇となっています。

軸となるテーマは「教育」「愛」「幸福」。しかし随所に「なぜ仕事をするのか」「自立するとは何か」など、現場の仕事やライフスタイルに疑問を抱いている人、そして幸せになるために転職しようと考えている人にも示唆的な内容が盛り込まれています。

ここではそれらの部分に注目し、アドラー的な「成功する転職」の考え方を提案します。きっと転職する勇気を与えてくれるはずです。

そもそも、わたしたちはなぜ仕事をするのか?

Baker in his bakery baking bread baker posing in his bakery bakehouse in the early morning between fresh baked artisan bread

●「仕事」とはなにか?

仕事とは、地球という厳しい自然環境を生き抜いていくための生産手段である。

アドラーは仕事をこのように定義付けています。その上で、鋭い牙や強靭な身体能力を持たない人間が身につけた働き方を「分業」だと指摘します。

また、私たちが仕事をする理由を「利己心」と「他者貢献」のためだとしています。この「利己心」と「他者貢献」、一見すると矛盾しますが『国富論』の著者アダム・スミスの考え方をすれば、全く矛盾していないことがわかります。

たとえば、超一流のパン職人がいて、彼はパンを作れば作るほどお金持ちになる状態だとしましょう。しかし自分で小麦から作り始めると、良質な小麦を作るためのノウハウがないため、なかなか美味しいパンになりません。

そこで彼はお金持ちになりたい一心で、超一流の小麦農家から小麦を仕入れることにします。すると自分の農地で育てた良質な小麦を美味しいパンにできずに悩んでいた小麦農家は大喜び。結果、パン職人の利己心は、小麦農家への他者貢献となります。

このような構造は現代のビジネスでも変わらない資本主義経済の大原則です。私たちが利己心を持って得意な仕事や最も生産性の高い仕事をすることは、そのまま他者・社会への貢献につながるというわけです。転職をすべきか悩んでいる人は、利己的に考えてもいいのです。今の会社で働くより転職した方が、自分にとっても社会にとってもメリットのある選択になるかもしれません。

本当は「転職したい」あなたが、変われない理由

Man has to complete his report till next morning

今の仕事や、職場の環境に決して満足していない自分がいるのに、それでも転職に踏み切れない、転職する勇気が出ない人は多いと言います。新たなフィールドでは幸せになるチャンスがあるのに、それを掴もうとしない人にはどんな理由があるのでしょうか。『幸せになる勇気』から、そんなあなたの背中を押すような考え方を教えましょう。

●「過去」を都合の良いように変えていることを理解せよ

「転職する勇気」の中には「今の会社を辞める勇気」が含まれているでしょう。これを持てるかどうかは転職において最も大きな問題です。この問題、現状の自分を肯定している人には決して解決できません。

例えば「いろいろあったけど、今の仕事には満足している」という人。「いろいろあったから」今の仕事に満足しているのではなく、「今の仕事に満足していると思いたいから」過去を美化しているとアドラーは言います。もちろん本当に心底現状に満足しているのなら転職の必要はありません。

しかし何かしらの不満があるからこそ、「転職」という選択肢が浮かんでいるはずです。普段、居酒屋で「こんな仕事辞めてやる!」と愚痴をこぼしているのに、いざ転職の話になると現状を肯定しようとするのは「逃げ」でしかありません。逃げていては変われない。これは当然です。

●「これからどうするか」だけを考えよ

何か悩んでいる時に「悪いあの人」への非難や「かわいそうな私」のアピール、つまり過去の話に終始するのも変われない人の典型です。

『幸せになる勇気』に登場する哲人はこれらに対して「そこに語り合うべきことが存在しない」とし、仮に慰めたとしても、明日からの毎日には何ら進歩をもたらさないと言います。大切なのは「これからどうするか」の一点だけなのです。これだけを考えることで初めて私たちは変わることができます。

しかし、そんな哲人の言葉に対しても、青年はこう反論します。

しかし、もしもわたしの「これから」を真剣に考えるというのなら、まずは前提となる「これまで」を知っていただく必要があるでしょう?

この反論を哲人はバッサリと切り捨てます。なぜならば先ほども見たように私たちは「過去」を自分の都合の良いように変えてしまう癖があるからです。

過去の話をしたところで、「変わらない言い訳」にしかなりません。「これからどうするか」。変わるためにはそれだけが重要です。

「わたしでいる勇気」は持っているか?

転職したいと考える上で、多くの人が「なりたい自分」と「現在(いま)の自分」について深く考えることでしょう。「なりたい自分」を目指して転職をすることで、何かを失うような感じがしてしまい、転職する勇気が出ない、という人もきっと多いはずです。そんな時は、あなたがもっとも大切にする価値を考えてみてください。

●アドラー的「自立」とは?

アドラー心理学において「自立」とは「『わたし』の価値を、自ら決定すること」です。逆に、自分の価値を他人が決定するとはどういうことでしょう。仕事を例にして言うのなら、

上司に評価されている
高い給料をもらっている
誰もが知る大企業で働いている
恋人に愛されている
友人に認められている
両親を安心させている

これらのことで自分の価値を感じているうちは、まだ自分の価値の決定を他者に依存している状態です。

自己承認欲求を他者ではなく、自分によって満たす。これができてはじめて「自立している」と言うことができます。これを哲人は次のようにも表現します。

「人と違うこと」に価値を置くのではなく、「わたしであること」に価値を置くのです。

ただしこれは非常に難しいことです。私たちはついつい他者と比べ、他者よりも優れていることを証明しようと躍起になってしまいます。しかしそれはいつまでも他者に依存して生きることにほかなりません。自立するためには「わたしでいる勇気」が必要なのです。

●その転職を成功させるために

「成功する転職」を「より幸せになるための選択」とするのなら、アドラー的「自立」は必ず獲得しなければならないライフスタイルです。

家族や恋人からの評価、もしくは社会的ステータスのために仕事を選んだり、収入をアップを狙ったりしているのであれば、その転職はおそらく失敗します。なぜならそれは他者に依存した選択だからです。

たとえ収入アップが実現したとしても、自分の幸せは結局他者任せのままになってしまいます。仮に恋人が「これくらいの収入じゃ満足できない」といい始めれば再び転職をしなければなりません。

転職を成功させるために必要なのは、自分の中の「やりたいこと」「好きなこと」を徹底的に見極める姿勢です。そのためには他者への依存を排除し、自分で自分を承認できるアドラー的「自立」が必須なのです。

「転職する勇気が出ない」という、つまらない言い訳は終わりにしよう!

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自分が変われない理由を「過去」や「他者」のせいにしていても、あなたの人生は一歩も進みません。それらはすべて「できない言い訳」なのです。

「わたしでいる勇気」を持つこと。これが転職における成功、あるいは人生の幸せを手に入れるには必要不可欠です。まずは自立していない自分自身としっかり向き合い、自分の中の「やりたいこと」「好きなこと」を素直に実行することから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献『幸せになる勇気』
Career Supli
このアドラー本は、前作も今作も本当に素晴らしい内容です。人生を変える力がある本なのでぜひ読んでみてください。
[文・編集]サムライト編集部