100年生きる時代
近年の医療テクノロジーの進化によって、わずかな血液で1ミリ以下の癌から、遺伝子による体質、それに疲労度や免疫年齢までわかる時代になってきました。この状況はAIの急速な成長を促すディープラーニングによってますます加速していきます。
こうした予防医学が発展していくと、当然いまよりも平均寿命が伸びていきます。いま30代の人たちは余裕で100年ぐらい生きる時代になるでしょう。ある意味、恐ろしいですよね。だっていままでそんな世界をだれも経験してないんですから。みんなが当然のように100年生きる時代に何が起こるのか。
あなたはいま、何歳ですか?100歳まで生きると考えたら今30歳の場合、残り25,550日あります。長いですよね。自分たちの親世代とは異なるライフサイクルになってくるので、今の常識は役にたちません。じゃあどんなことを想定して生きなければいけないのか、考えていきましょう。
何度か本業を変えていく時代に
AIによってどんどん今ある仕事がなくなっていくと言われていますね。実際にどんな仕事がなくなっていくのでしょうか。人口知能とロボットが実用化されることで消えてしまう仕事のリストが内外の研究機関から発表されていますので見てみましょう。
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出典:【週間ダイヤモンド】2015年8月22日号より作成 1ドル100円換算
膨大なデータから何か必要とされているデータを探すような仕事、特許や法律、会計、監査、医療分野のレントゲンやCT画像の診断などは消える可能性が高いです。昨年、IBM開発のワトソンが、2000万件の癌に関する医療論文を読み込んで、ある患者が特殊なタイプの癌であることを特定して抗癌剤の変更を提案しました。
それを医師が使ってみたところ、副作用に苦しんでいた患者が劇的に回復して、命が救われるというニュースがありました。医師のような高度な知的労働でも、人口知能の方が得意なところはたくさん出てきます。
ただ、なくなる仕事は必ずしも自動化しやすい仕事ではありません。人間がやるよりも人口知能がやった方が、圧倒的に生産性が高い仕事や、経済的なインパクトが大きい仕事から順番に置き換えられていきます。
だからニッチで自動化されても経済的なインパクトが少ない仕事はしばらく残っていきそうです。しかし、いずれにしても今やっている仕事を生涯続けていける人は少数派になっていき、何度か本業を変えていきながら仕事をしていくことが当たり前になると思います。
このような時代に重要なのは変化に柔軟に対応していくこと、失敗を恐れずに経験を多く積んでそこから学んでいくことです。インターネットとオンライン学習によって単純な知識ならだれでも手に入れられるようになりました。知識の量では差がつかず、その知識を使ってどんな経験をしたかがポイントです。
マニュアル化できない暗黙知をどれだけ得られるかが重要です。例えばマーケティングを学びたいなら、本を読むだけでなく、実際に自分で商品を仕入れたり、商品を開発して売ってみましょう。身銭を切ってやってみることで理解できることがたくさんあります。
医療リテラシーで大きな差がつく
冒頭でも触れたように医療テクノロジーの進化が凄まじく、遺伝子によっていろんなことがわかるようになってきました。また、日本を除く先進国で医療用大麻の解禁が広まりはじめるなど、新しい動きが起こっています。予防医学もどんどん進化しています。
最近ホリエモンがピロリ菌の除去を勧める啓蒙活動をしたりしていますが、ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍なんかの原因だからです。こういった知識があるかどうかは、健康で長生きできるかに大きく影響してきます。
もっと身近なところでいえば、歯の定期的なメンテナンスは非常に重要なのですが、あまり行っている人は多くありません。歯周病は予防可能な病気です。そのためには、自身でのブラッシングだけでは不十分で、必ず歯科での定期的な歯石除去が必要なのです。
また歯周病は、心筋梗塞などの病気の原因とも言われています。健康に関心がある人にとっては常識でも、そうでない人は、もう何年も歯医者にいってないという人もいるでしょう。こうしたちょっとした知識と行動が、老後に大きく影響してきます。
見える資産と見えない資産
100年時代になったらいままで以上に老後のマネープランを意識しなければいけないのは容易に想像がつくと思います。しかし意識を向けなければいけない資産は、目に見える資産だけではありません。
目に見えない資産にもしっかり意識を向ける必要がありません。それは、あなたの親族、友人関係、知識、健康、などの目に見えない資産です。資産はしばらく存続する可能性がある半面、たいてい何らかの形で価値が減少していきます。
そのため資産には慎重なメンテナンスとある程度の投資が必要になってきます。著書『ライフシフト』では見えない資産を次の3つに分類して紹介しています。
一つ目は生産性資産。人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素であることは言うまでもないが、他にも様々な要素が含まれる。
二つ目は活力資産。大ざっぱに言うと、肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人、パートナーやその他家族との良好な関係などが該当する。長期追跡取材によれば、活力資産を潤沢に蓄えていることは、よい人生の重要な要素の一つだ。
最後は変身資産。100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変化を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。
引用:『ライフシフト』p127 東洋経済新報社 2016年
STEM+Aを学ぼう
100年生きるに備えてすぐにできることはあるのでしょうか。実はあるんです。それは『STEM』に関心を持つことです。
『STEM』とは英語で「幹」を意味する言葉です。主に教育用語として使われることが多い言葉で『STEM教育』という言葉としても使われています。
STEMとは、
サイエンス(科学)の「S」
テクノロジー(技術)の「T」
エンジニアリング(工学)の「E」
マセマティック(数学)の「M」
を並べた造語です。今後世の中がどのように変化していくのかを理解するにはSTEMの知識が必須になってきます。これに加えてアート(芸術)のAを加えた『STEAM』という言葉も生まれています。
顧客の体験を含めたユーザーとのコミュニケーションをデザインするのが重要という話をよく耳にしますが、それを適切に設計するにはアート(芸術)の知識も欠かせなくなってきています。『STEAM』の重要性について詳しく知りたい人は成毛眞さんの『AI時代の人生選戦略』をご覧ください。あらゆることが大きく変わっている時代なので、それを楽しむための準備をしっかりとしていきましょう。